作品名の後の数字は「男:女:性別不問」の比率になっております。

[4:1:1]となっていたら

・男性4人、女性1人、男女どちらがやってもいい役が1人

という感じです。

あくまで台本選びのガイドなので、これを必ず守らないといけないというものではないのでご了承ください

※上演の際は必ず「利用規約」をお読みください

田舎泥棒の末路 [2:0:1]

0:とある山間の村。今夜は人口の少ないその村のお祭りである。

0:山の中腹にある木造の民家に、怪しい男が二人、近づいてくる。

0:日はすでに傾き始めて、遠くの神社から微かにお祭りばやしが聞こえている。

男1:はじまってるな

男2:うん、丁度だったね

男1:今が5時だから、大体リミットは3時間くらいか

男2:何件回れるかな

男1:馬鹿、回れるだけ回るんだよ。とにかくかたっぱしから入って、もらえるだけ貰うんだ。お前、わかってるよな?

男2:わかってるよ、点検だろ。

男1:そうだ。とにかくバレたらヤバイ。万が一見つかって、何か聞かれたら「私たち点検に来たんです。」それだけでいい。

男2:点検に来たんです

男1:そうだ。それ以上は喋るんじゃねえぞ。お前はバカなんだから、喋れば喋るほどボロが出る。いいか?何を聞かれても―

男2:点検に来ました、だろ、しつこいな兄ちゃんは

男1:しつこいぐらいじゃないとお前は覚えないだろうが

男2:大丈夫だって・・・「点検に来ました」

男2:・・・これくらい言えるよ

男1:点検?なんの点検ですか?

男2:えっと、お、おたくの冷蔵庫が、壊れて、中の、中の魚とかが腐ったりしてないかって

男1:コノヤロウ

男2:いってーな!ぶつことないだろ!

男1:しっ!でけえ声出すんじゃねーよ

男1:いいか?点検ってこと以外は言うなよ?それ以外はしゃべるんじゃないぞ

男2:わかったよぉ

男1:相手が筋が通らねえ事いって来たときは、俺がしゃべるから、お前は黙ってろ

男2:わかった

男1:ま、とはいえ今夜は祭りだ。人に会う事なんてないだろうけどな。

男2:じゃあこんな練習しなくてよかったじゃねえか

男1:馬鹿、念には念を入れんだよ。教習所で習っただろ?かもしれない運転ってよ

男2:習ってないよ

男1:ああ、お前免許持ってねーもんな

男2:にーちゃんだって持ってないだろ!

男1:俺は持ってなくても運転できるからいいんだ!

男2:・・・にーちゃんの方がうるさいじゃないか

男1:こまけえな

男2:あっ

男1:ん?

男2:あれ、みて、兄ちゃん。

男1:お、第一民家、発見だな

男2:やる?

男1:あたりめーだろ。

男2:よし・・・

男1:手順は分かってるな

男2:わかってるよ、最初は財布だろ

男1:そうだ。財布、通帳、金目のもんだ。

男2:どれもなかったら?

男1:5分以上かかるようなら次にいく

男2:おっけー

男1:行くぞ。

男2:うん・・・

0:男1、チャイムを鳴らす。が、中から返事はない。

男1:すみませーん。

男1:ニコニコ電気でーす。点検に参りましたー。

0:間

男1:・・・

男2:誰も出ないね

男1:(正面玄関から中に入りながら)ま、祭りの日だからな

男2:えっ

男1:・・・どうした?

男2:前から入るの

男1:なんだって?

男2:え、正面から入るのって。いつも裏からなのに。

男1:あ?正面に決まってんだろ。

男2:なんで?

男1:俺らは何もんだ?

男2:泥棒

男1:こらっ

男2:いてぇえ!なにすんだ!

男1:・・・(わざとらしく)あれぇー?あなたここに何しに来たんですかぁ?

男2:・・・?

男1:わたしの家で、あなたは、なにをしてるん、で、す、か!

男2:!!!

男2:点検です!点検点検点検!

男1:そうだ、俺らは電気の点検に来たんだ。

男2:そうか!そしたら裏口から入ったら変だよな!まるでドロボーみたいじゃねーか

男1:そうだ。だから、表から、堂々といく

男2:そういう事かあ・・・やっぱ兄ちゃん頭いいな

男1:ふん。お前が頭悪すぎるんだよ。バーカ。

男2:あー!またそういうこという!言っとくけど俺はね、にーちゃんの事、ほんとに頭いいとはこれーっぽっちも思って―

0:と、男2の言葉を無視して男1が玄関に手をかけると、引き戸がすんなりと開く。

男1:あれ?

男2:ん?どうしたんだよ

男1:開いたよ

男2:あら、ほんとだ

男1:こりゃあこの村ちょろいかもな。不用心にもほどがある。さ、入るぞ。

男2:点検に来ましたぁー!

男1:うるせえ!玄関ちゃんと閉めろよ!

男2:あーい

0:男2、後ろ手に玄関の引き戸を占める。

男1:さてと・・・まずは、財布だ

男2:おっ、財布だな、えっと、財布財布

男1:おいマサ。

男2:あ?

男1:やたらに触るんじゃねえぞ。なるべく荒らさねえように探すんだ。

男2:荒らしたらだめなのか

男1:たりめえだよ。少しでも騒ぎになるのを遅らすんだ。こういう細かい気遣いが一番大事なんだよ。

男2:ふーん、そういうもんかねえ

男1:時間もあるからお前に少しだけ、コツを教えてやる

男2:へ?コツって?

男1:物探しの極意ってやつだよ。探す順番、もういっぺん言ってみろ。

男2:えっと、財布、通信簿、金目のもんだろ?

男1:馬鹿、通信簿じゃねえ。家主の成績調べてどうすんだよ。二つ目は通帳だ。

男2:ああ、通帳か

男1:そうだ。財布、通帳、最後に金目の物。

男1:最初の財布。これは目につく場所に置いてあることが多い。ただし空き巣の場合は十中八九見つからない。なぜなら家主は外だから、大体が外に持っていかれちまってる。

男2:はあ、なるほどなあ

男1:特に今日は祭りの日だ。子供や孫に小遣いをあげるために、持ってかれちまってるのさ。

男2:はぁ・・・

男1:だからな、探すには探すんだが、この財布はパパ―っと目につくところを見るだけでいい。

男2:兄ちゃん

男1:目につくところにおいて無けりゃ、もうその家に財布はねえってことだ

男2:兄ちゃん

男1:次に通帳。

男2:兄ちゃん!

男1:ああ!?

男2:あったぞ・・・財布

男1:あ?

男2:おいてあるよ、そこ、土間のとこ

男1:・・・ほんとだ

0:間

男2:(小声で)なあ、兄ちゃん、まだ家の人いるんじゃないの?ここ

男1:・・・待ってろ、確認してくる

0:男1、靴を脱いで土間に上がって家をぐるっと巡回して戻ってくる。

男1:大丈夫だ、誰もいねえ

男2:よかったああ・・・

男1:そもそも最初に声かけた時に返事なかったしな

男2:じゃあこの財布、誰のだ?

男1:開けてみろ、免許とか保険証とか入ってんだろ。

男2:あ、ああ

0:男2、中身を空ける。

男2:えっ・・・これ

男1:あ?

男2:兄ちゃん、すげーよこれ、こいつ金持ちだ

男1:ああ?なんだよ?

男2:1、10、100、1000、万、十万・・・十万円も持ってるぞこいつ!財布に!

男1:はぁ!?んな馬鹿な・・・見せろ

0:男1、財布を奪い取って中を確認する。と、途端にあきれ顔になる。

男1:マサ

男2:なに?

男1:いいか・・・1万円、2万円、3万円・・・4、5、6万円。

男1:これは、6万円だ。

男2:ああ?どういうことだ?1、10、100、1000、万、十万・・・十万円じゃねえか

男1:・・・いい、めんどくさい。とりあえず10万円ゲットだな

男2:うん、幸先いいねえ

男1:ああ、悪くねえ・・・霧崎 一(キリサキ ハジメ)、作業員、54歳、か。現場監督してんのか。大したもんだな。

男2:にーちゃん何見てんの?

男1:ああ?ああ、免許証だ。

男2:え!免許証!?見たい見たい

男1:おもしろいもんじゃねーぞ

男2:なになに、へえ、現場監督なんだこいつ。どーりで10万円ももってるもんだ。

男1:6万な。普通だよ。

男2:ふつうなもんか!俺の稼ぎいくらだか知ってんのかよ

男1:2万円

男2:安すぎなんだよ・・・って雇い主兄ちゃんじゃないか!おーかーねーかーえーしーてーよー

男1:うるせえなあ。仕事が終わったらお前に分け前やるから。

男2:ぜったいだからな

男1:わかったから他探すんだよ、早くしないと祭りがおわっちまう

男2:わかったよ。次は通帳だな。よし。

男1:物動かしたらもとに戻すんだぞー

男2:わかってるって

男1:それにしてもしみったれてんな。なんだこの時計・・・カシ、ス。

男1:パチモンじゃねーか!

0:男2がタンスの引き出しを開ける。

男2:ん?

男1:なんだーなんか見つけたのかー

男2:財布だ

男1:なんだと?

男2:見てよ、今度は女物だ

男1:おお、開けろ開けろ

男2:うん・・・

男1:えっ

男2:イチ、ジュウ、ヒャク、セン、マン・・・ジュウマン・・・

男1:貸せっ

0:男1、金を数える

男1:21、22、23・・・すげえ、大金だ

男2:23万?

男1:ああ、23万だ

男2:金持ちじゃねーか!

男1:でかしたマサ!これだけありゃあ黒字だ、ずらかるぞ!いいかマサ、動かしたもんは全部元どーりにするんだ、この財布も元のところ戻しとけ、足跡残ってるところは拭いて帰れよ、とにかく―

男2:兄ちゃん

男1:あ?

男2:兄ちゃんちょっと、来てよ

男1:なんだよ!たらたらすんなよ、ずらかるぞ!

男2:財布だ

男1:なんだって?

男2:財布だよ、ほら、また財布がある

男1:・・・財布だな

男2:それにほら、この棚のなか、通帳とか、ネックレスとか、全部入ってるよ

男1:うそだろ?

男2:財布、中身も全部入ってる

0:間

男2:大金持ちだぞ!兄ちゃん!

男1:すごいな!全部取ってくぞ!ほら、こんなか入れろ!

男2:ああ、わかった・・・あーどうしよう手が震える

男1:情けねえな、貸せ。俺が渡すから、お前はその中に詰め込んでいくんだ

男2:うん、わかった。

男1:はい財布

男2:財布、一丁(中を開ける)

男1:はい財布

男2:すげえ、こっちにもいっぱいお札入ってるよ

男1:マサ!いちいち確認しなくていいんだよ。とにかく全部突っ込むんだ

男2:あ、ああごめん、財布

男1:はい財布

男2:財布

男1:財布

男2:財布

男1:ネックレス

男2:ネックレス

男1:時計・・・ってこれ、ロレックスじゃねえか

男2:ロレ・・・?

男1:高級なヤツだよ。まあ本物かはわかんねえけどな

男2:売ったら高い?

男1:ああ、めちゃくちゃ高値が付くぞ

男2:3万円くらい?

男1:馬鹿か。口より手を動かすんだよ

男2:兄ちゃんが先にしゃべったんじゃないか

男1:はい通帳

男2:通帳

男1:はい通帳

男2:通帳

男1:はい通帳

男2:通帳

男1:・・・通帳

男2:通帳

男1:・・・・・・通帳

男2:通帳

男1:・・・

男2:つう・・・どうしたの兄ちゃん

男1:・・・おかしい

男2:え?

男1:おかしいな・・・

男2:なにがだよ

男1:マサ、渡した通帳、いくつか見せてくれ

男2:時間ないんじゃないの・・・?

男1:いいから!

0:男2、しぶしぶ男1に通帳をいくつか渡す。男1はまじまじとその通帳を確認する。

男1:・・・おいマサ、ここの家主、なんて名前だった?

男2:えっと、確か、霧崎なんとかって書いてあったな

男1:だよな・・・

男2:それがなんなんだよ

男1:・・・違う

男2:え?

男1:違う、これも、これも違う

男2:なんだよ。何が違うんだ?

男1:名前だよ・・・

男2:名前?

男1:ここの家主、霧崎だったろ?

男2:うん、確かな

男1:でも、この通帳。トオガサ、ハマイエ、ナガタ、フジシロ、カサイ・・・

男2:スズナ、スズシロ、これぞ七草ってか

男1:・・・

男2:兄ちゃん大丈夫か?

男1:まだわかんねえのか!

男2:びっくりした、そんな怒鳴るなよ

男1:おかしいだろ。なんでこんないろんなヤツの通帳があるんだ?

男2:そりゃあ、いっぱい口座もってるかもしんないし、家族のかもしれないだろ

男1:なんで苗字が違うんだよ・・・

男2:苗字?

男1:トオガサ、ハマイエ、ナガタ。マサ、ここの家主なんてった?

男2:そりゃもう何度も言ってるだろ、霧崎だって・・・あ。

男1:考えてみればさっきの時計やらなにやらもそうだ。男物もあれば女ものもあった。財布も全然デザインが違った。

男2:・・・。

男1:この家・・・なんかおかしいぞ。

0:家の外。遠くの方からお祭りばやしが聞こえる。

男1:マサ・・・

男2:ん?

男1:ちょっと気になったんだけど、さっきから変なにおいしねえか?

男2:におい?

男1:・・・

男2:する。くせえな。兄ちゃん屁したか?

男1:してねえよ。

男2:なんだ、この匂い。見たところ、冷蔵庫もなさそうだし、台所もきれいだしな。

男1:マサ、逃げるぞ

男2:まあまだ、お祭りもやってるし、焦んなくても大丈夫だろ

男1:マサ!急げ、早く、金持ってずらかるんだよ!

男2:そんなあわてんなって、もしかしたらもっとすごいおたからがあったりして、ここかなー、ここかなー

男1:マサ!むやみに戸棚をあけんなって!

男2:ここか・・・なっ!

0:間。家の外から、花火の爆発音が響いている。

男2:ひっ・・・兄ちゃん

男1:閉めろ、逃げるぞマサ

男2:だ、ダメだ、腰が抜けた

男1:ったく、そんなこと言ってる場合じゃねえ!早く立て!

男2:わ、わかった、ちょっと、手貸してくれって

男1:くそ、やばいやばいやばい、早く、早くするんだよ

男2:早くったって、待ってな、今立つから、よし、収まってきた。大丈夫、大丈夫

0:男2が深呼吸をしていると、ガラリと玄関の引き戸が開く。

家主:なにしてるんですか

0:場が凍り付く。玄関の方を二人が見ると、40代くらいの作業着を着た男性が立っている。

男2:(絞り出すような声で)電気の、点検に来たものです。

0:時間が経過する。場面は変わって土間のいろりの所。男1と男2、家主が枝豆をつまみにビールを飲んでいる。男1と男2はどこか気まずそうである。

家主:あっはっは、まあこの辺は夜になると本当に暗いですからね。地元の人間も山の方に来ると迷うことがある。

男1:あ、そうなんですね

家主:そうなんですよ。普通の道だけだったらいいんですけどね、大体一本道ですから。しかしこの辺りはイノシシやシカがいますから、獣道がひょいと現れたりする。

男1:はぁ

家主:そうなるともうわからない。ここの道だったっけと進んでみると行き止まりで、戻ろうとするとまた別の道に突き当たる。

家主:そういうとき、どうするか知ってますか?

男1:さあ・・・切り株を見る?

家主:ああ、切り株ね。はいはい。

家主:切り株があればまあそれもいいでしょうけど、このあたりの樹木は伐採するような代物じゃあありませんからね。多分見つからないでしょうね。

男1:じゃあどうすればいいんです?

家主:簡単ですよ、朝を待てばいいんです。

男1:朝を?

家主:ええ、朝になれば、見通しが良くなりますからね。大通りは大方舗装されてますし、山から村だって見える。

家主:村の方向に歩いていけば、人に会えます。

男1:なるほど

家主:うちの村の人は親切ですからね、人に会えれば、車かなんかで、送っていってくれるでしょう。

男1:それは気が引けますね

家主:どうして?

男1:電気会社の人間が、お客様に送ってもらったと知られたら、上司になんて言われるか

家主:まあ、それもそうか。でもほら、緊急事態だし。それでも怒られちゃうんですか?

男1:ええ、まあ、なるべくは

家主:そうですか・・・

家主:ま、村の人間はいつでも頼ってもらって結構ですからね

家主:私、こう見えて自警団の団長なんですよ

男1:へえ、自警団

家主:はい。だから村の人間には口がきくし、時間もありますから。

男1:はぁ・・・

家主:ところで、そちらの方は大丈夫ですか?

男1:え?ああ、こいつですか

家主:さっきからなーんにもしゃべりませんが・・・枝豆お嫌いでしたかな?

男2:・・・私は、点検に来ました、電気の

家主:はあ、それはさっき伺いましたよ

0:男1、男2を叩く。

男2:いてっ!なにすんだよ!

男1:なにするんですか、だろ。先輩には敬語を使いなさい。お客様の前なんだから。

男2:ごめんなさい・・・

家主:はっはっは、ちゃんと教育されてるんですな。まあでも、今夜はせっかくなんだ、無礼講と行きましょうよ。

男1:いえいえ、そうはいきませんよ。

家主:まあ、とにかくゆっくりとしていってください。狭い家ですが、布団はいくつかありますから。

男1:いえほんと、大丈夫です

家主:まあ遠慮せず。私もね、祭りで村の連中と飲んだ後、静かになってさみしいと思ってたところなんで、丁度良かった

男1:はあ・・・しかし、私達もまだ仕事中なので、あまり長居はできなくて。な?

男2:(大きく頷く)

男1:なので、そろそろ、私達もお暇しようかと

家主:ええ?そうなんですか?

男1:はい、ほんと、ごちそうになっちゃってすみません

家主:いえいえ、そんな大層なもんじゃないですよ

男2:ごちそうさまでした

男1:そうだな、えらいな、挨拶ができて

家主:ははは、仲がよろしいんですな

男1:そんなそんな、憎い後輩ですよー

男2:そうですよこんなやつ、憎い先輩ですよー

男1:こらっ

男2:いてえ!

家主:漫才を見ているようですな

男1:いえいえ、すみません、なんか騒がしくしちゃって

家主:いいえ、こちらこそ、引き留めちゃってすみませんね

男1:それじゃあ、ほんと、お世話になりました。

男2:お世話になりました。

家主:はいはい、またいらしてくださいね

男1:はい、では、失礼します

0:二人、引き戸を開けて、外へ出ていこうとする。

家主:あ、そうだ

男1:・・・はい?

家主:電気、どうだったんですか?

男1:電気?

家主:点検だったんでしょう?電気の

男1:・・・はい

男2:点検させていただきました

家主:はい

男1:問題は、ありませんでした

家主:あ、そうですか

男1:はい、いろいろ見ましたが、問題ありませんでした

家主:おお、それはよかった

男1:はい、引き続き、弊社をよろしくお願いいたします

男2:よろしくお願いいたします。

家主:ええ

男1:それでは、失礼して

家主:あれ・・・?でもおかしいな。

男1:・・・なんですか?

家主:うち、電気使ってましたっけ?

男1:・・・はい?

家主:いや、うちね、自家発電してるじゃないですか。ここまで田舎になると、電気を引くと逆に高くついちゃいましてね。

男1:はい・・・

家主:ガソリンで、発電してるんですよ。音してたでしょう?

男1:はい、立派な、発電機でしたよね

男2:立派でした・・・

家主:ええ。ということは、御社の電気はうち、使ってませんよね

男1:そうですね、送電は、してないですね

家主:ああ、よかった。請求も来ないのに電気だけ使ってるなんて、御社に不利益ですもんね。

男1:え、ええ・・・ご心配、ありがとうございます。

家主:いえいえ・・・ん?

男1:・・・まだなにか?

家主:いえ、そうなると、何を点検したのかなあと思いまして。

男1:はいい?

家主:いえね、あなた方、最初に電気の点検に来たといったでしょう?

男1:いいましたね

男2:いいました

家主:ですよね。でもうちは電気使ってないから・・・なんの点検をしていただいたんですか?

男1:・・・

家主:あなた方、本当に電気屋さんなんですか・・・?

男2:・・・!

男1:か・・・

家主:か?

男1:家電製品のね、点検に、来たんです。

家主:家電製品?

男1:は、はい。最近ね、うちの販売している家電から火が出ましてね、同じ型番の製品を回収して回ってるんですよ

家主:はあ、なるほど

男1:いやあ、本当に申し訳ない話ですが、でもご安心ください、問題の家電はありませんでした。な?

男2:え、ええ。そもそも霧崎さんのお宅には家電があまりおいてなかったので、大丈夫でした。

家主:そうでしたか、それはよかった

男2:はい、ご安心ください。

男1:それでは、もうほんと、社長に怒られちゃいますんで

家主:・・・電気屋さん

男1:・・・はい

家主:最後に一つだけいいですか?

男1:・・・どうぞ?

家主:なんで私の名前、知ってるんですか。

男1:・・・はい?

家主:先ほど、そちらの方が、私の事、霧崎さんって。名乗りましたっけ?私

男1:ああ、霧崎さんってね、こいつがね

家主:はい、多分私、言ってないですよね、名前。なんでご存じなんですかね?

男1:なんで・・・なんですかねえ?

家主:え?

男1:おいお前、なんでこの方のお名前を知ってるんだよ

男2:え、ええ・・・それは・・・

家主:(じっと男2を見つめる)

男2:聞いたんですよ

家主:・・・だれに?

男2:えっと、えっと・・・ナガタ、さん?

家主:ナガタさん?

男2:そそ、そうです、いるでしょ?この村に、ナガタさんって

家主:・・・

男2:ここに来る前に、永田さんの家に寄ったんです。それで、そこでね、自警団の団長さん、霧崎さんのお宅の事聞きまして

家主:・・・

0:緊迫の間

家主:なーんだ、そうでしたか!

男1:えっ

家主:永田さんの所にね!それでうちの事を。はっはっは!

男1:あ、はい、はいそうなんですよー!

家主:面白い方だったでしょう!ナガタさん!

男1:ええ!本当に!ユニークな方で!なあ!

男2:え、ええ!それはもう本当に、とってもお優しい方でした!

家主:そうでしょうそうでしょう!

男1:ええー!本当に!とってもいい方だったのでまたご一緒したいです!なあ!

男2:ハイ!ぜひ!今度お詫びに来ますので、またごゆっくりお話したいです!

家主:いやあ、ナガタさんねえ、本当にあの方とは仲が良かったんですよ

男1:いやあ、霧崎さんも良い方なので、ぜひ今度僕ら4人でご一緒に・・・え?

家主:丁度いいじゃないですか、永田さん丁度今うちにいるんで、これから一緒に飲みましょうよ

0:間

家主:4人で

男2:いやあああああああああああ!

0:男1と男2が扉の内側に引っ張り込まれ、引き戸がぴしゃりと閉まる

0:暗転。田舎の虫の声だけが静かに聞こえる。

0:完

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