作品名の後の数字は「男:女:性別不問」の比率になっております。

[4:1:1]となっていたら

・男性4人、女性1人、男女どちらがやってもいい役が1人

という感じです。

あくまで台本選びのガイドなので、これを必ず守らないといけないというものではないのでご了承ください

※上演の際は必ず「利用規約」をお読みください

チャラニョえもん~瑠璃色の研究~【0:1:4】

※この作品は茶屋らて@放浪作家にょすけ裏庭がラジオの企画のために合作した台本です。(当時のアーカイブは台本末尾におまけで付けておきました!)

※ネットで上演する際、作者名は「茶屋、らて@放浪作家、にょすけ、裏庭」(敬称は任意)としてください


地下の巨大な空間に建設されたバラック集落のはずれで、子供が集まっている。

モーグ  おーい!トクチー!あーそーぼー!

モーグ  おーい!トクチー!いるんだろー!あそぼーよー!

テルデ  モーグ、もういいよ

モーグ  おーい!トクチー!あそぼーってばー!

テルデ  おいモーグ

モーグ  なに

テルデ  もういいって、俺たちだけで遊ぼうよ

モーグ  でも、仲間外れはよくないってとーちゃん言ってた!

テルデ  仲間外れじゃないよ、いつも通り、みんなで遊ぼう

モーグ  今日は来てくれるかもしれないだろ。おーい!トクチ―!

テルデ  まったく・・・

モーグ  おーい!トークーチーー!

トクチ  (声だけ)うるさいぞ!

モーグ  トク・・・チ・・・

トクチ  毎日毎日凝りもせずきやがって!

トクチ  研究の邪魔なんだよ!おまえらはおまえらで遊んでればいいだろ!

テルデ  お、おいトクチ―、そんな言い方ないだろ!

トクチ  しつこいんだよ!

モーグ  ひっ

トクチ  迷惑だ、帰ってくれ

SEバタンとドアの閉まる音

モーグ  なんなの・・・

テルデ  だから言ったろ・・・

モーグ  びっくりした・・・

テルデ  昔はあんなやつじゃなかったんだけどな・・・

モーグ  そうなの?

テルデ  ああ、お前が隣駅から越してくる前は、普通に俺らとも遊んでたんだけど・・・

モーグ  だけど?

テルデ  変わっちまったんだ、あの事件以来

モーグ  事件?

テルデ  ああ、あれはお前がここに来る数年くらい前だったかな

テルデ  あいつ、かーちゃん殺されてんだ

モーグ  え・・・

テルデ  ま、ここではよくあることだけどな、それからあいつは家にこもりっきりってわけだ

テルデ  村の連中も、事情が事情だけに、不干渉決め込んでるんだよ

モーグ  そんな・・・

モーグ  それじゃあなおさら、僕らが遊んであげないとっ

テルデ  おいぃ、やめとけ・・・

テルデ  みんな、それぞれ事情があるんだ

テルデ  みんな、ギリギリで生きてる

テルデ  深入りはすんな

モーグ  わかった・・・

テルデ  俗(ぞく)ヴォヂャノトゥス暦666年、オーストラリアに突如飛来した隕石により、人類は居場所を失った

テルデ  2度・・・たった2度の地軸のズレが、すべてを狂わせた。

テルデ  長きにわたる氷河期により、地表にいるすべての生命は凍り付き

テルデ  熱帯地域は太陽光をいっぱいに受けて、真っ赤に溶けた。

テルデ  わずかに残された人類は、穴を掘った。

テルデ  今や、過去に起きたような大規模な争いは人類とは無縁だ。

テルデ  しかし代わりに手に入れたのは平和ではなく、果てしない飢えと、他人を蹴落としてでも生き延びようとするたくましさだった。

テルデ  敵は、常に内側にいるのだ。

  

  

  タイトルコール

マリネ  チャラニョえもん~瑠璃色の研究~

  


トクチ  そうかぁ・・・ここに電圧がかかりすぎると通信距離がおちるから・・・

トクチ  これで、どうだ!

SEバチバチという音と共に機械がショートする音

トクチ  まずい!!

トクチ  ふーふー!燃えるな!燃えるな燃えるな!ああ!コンデンサーが!

トクチ  ああああああああ!

トクチ  また発掘しなきゃな・・・

SE扉があく音

トクチ  ん・・・だ、誰だ!?

見ると、そこにはボロボロの服を着た少年が佇んでいる

ウニラ  ・・・

トクチ  お、おい・・・

ウニラ  ・・・

トクチ  ここは俺の家だぞ!だ、誰だお前!

ウニラ  ・・・

トクチ  おい!なんか言えよ!

ウニラ  なにしてるの

トクチ  は?

ウニラ  なに、してるの

トクチ  なにって・・・そ、そんなのお前に関係ねぇだろ!

ウニラ  ・・・

トクチ  いいから、早く、出て行けよ!

ウニラ  (機械を指さして)それ

トクチ  ああ!?

ウニラ  それ、なあに?

トクチ  な、なんでもねぇよ・・・

ウニラ  直してるの、それ

トクチ  ・・・

ウニラ  みして

トクチ  お、おい、勝手に触んな!

トクチ  おい!おいってば!

ウニラ  コンデンサー

トクチ  へ?

ウニラ  焼けちゃってる、コンデンサー

トクチ  お、おう・・・

ウニラ  直さないの?

トクチ  なにが

ウニラ  これ

トクチ  な、直すよ

ウニラ  うん

トクチ  うん

ウニラ  うん?

トクチ  だぁもういいから!とにかく出て行けって!

ウニラ  ああ、そんな乱暴にしないでよお

トクチ  何度も言うようだけど、ここは俺の家なん、だ、よ!

ウニラ  ああ、ああ!痛い!痛いよぉ!

トクチ  さあ、出て、行けっ

ウニラ  ごめんってえ、そんなに怒らないでって

トクチ  俺は謝ってほしいんじゃない!

ウニラ  ちょっと、押さないでって、わぁ!

トクチ  二度と来るなよ!

SEドアがバタンと閉まる音

ウニラ  はぁ・・・なにがわるかったのかなぁ

ウニラ  家に勝手に入っちゃったからかなぁ・・・

ウニラ  機械に勝手に触っちゃったからかなぁ・・・

ウニラ  コンデンサーのこと、気に障ったのかな

ウニラ  そりゃそうかぁ

ウニラ  電気二重層コンデンサは、温度耐性が弱いから、発火しちゃうってことくらい、あの子もわかってたよなぁ

ウニラ  「墓に鉄砲」って言うもんなぁ

SEガチャリとドアが開いて

トクチ  おい

ウニラ  うわぁ!!急に出てこないでよぉ!

トクチ  お前・・・

ウニラ  うん・・・?

トクチ  お前、詳しいのかよ

ウニラ  ええ?

トクチ  だから、お前は、詳しいのかよ

ウニラ  なにが?

トクチ  だからあ!その、そういう、機械とか、そういうの、詳しいのかよって

ウニラ  機械?

ウニラ  ああ、電子工学の事?

トクチ  でん、し・・・?

ウニラ  そりゃ詳しいよー!だって僕、エンジニアだから!

トクチ  エンジニア・・・?

ウニラ  そう、エンジニア!

トクチ  (ぼそっと)母さんも言ってた・・・

ウニラ  え?なあに?

トクチ  お前、名前は?

ウニラ  僕?僕は、ウニラ!

トクチ  そうか・・・

ウニラ  うん?

トクチ  お前、ちょっと来い

ウニラ  えっ

トクチ  早く!こっち来いって

ウニラ  え、でも、君の家だから

トクチ  (襟首をつかんで)いいから!

ウニラ  う、うわぁ!引っ張んないでよぉ!

トクチ  し、静かに!

ウニラ  ちょっとー!大事なイッチョウラなんだからー!

ウニラ  やめてよー!

SEバタンと扉が閉まる音

ボロ屋敷の外の環境音だけが残る。

SE機械音

トクチ  お前は今日から俺の開発に協力してもらう

トクチ  この日記に書かれている物が造れたらお前は帰っていい

ウニラ  この機械?

トクチ  そうだ

ウニラ  ・・・なんでこれを造りたいの?

トクチ  それは・・・お前には関係ねぇだろ・・・

ウニラ  ・・・君の名前、聞いてもいい?

トクチ  ・・・トクチだ

ウニラ  トクチ・・・うん、わかった。力を貸してあげる

トクチ  本当か!?

ウニラ  でも、これを造るには・・・材料が足りないね

トクチ  あーもう!分かってるよ!

トクチ  何十回も失敗して色々ダメにしちゃったからな・・・

ウニラ  え・・・そんなに失敗したの?

トクチ  悪いかよ!いつも、この工程でうまく行かないんだよな・・・

ウニラ  この日記、ちょっと貸して・・・

ウニラ  うーん、日記に書かれている設計図が少し違うような・・・

トクチ  そんなことない!母さんが間違えるはずないんだ!

ウニラ  母さん?

トクチ  ・・・それは母さんが遺した日記なんだよ

ウニラ  ・・・トクチのお母さんは・・・賢い人だったんだね

ウニラ  この設計図、そのまま造っても完成できないように書かれてる

ウニラ  こんな世界だから悪用されないようにって工夫だね

トクチ  でも、それじゃあもう造れないのか

ウニラ  ・・・造れる・・・かも

トクチ  え?

ウニラ  でも、もう少し調べないと・・・

トクチ  造ってくれればなんでも良い!

トクチ  なんなら・・・ここに住んでくれ!

トクチ  寝床も食べ物も俺が用意する!

ウニラ  え・・・でも、そしたらトクチは・・・

トクチ  大丈夫だ!頼む!これはどうしても作らないといけないんだ!

ウニラ  ・・・トクチ・・・これを造るには特殊な鉱石が必要なんだよ

ウニラ  それも念の込められた光る鉱石が

トクチ  それは、どこで手に入るんだ?

ウニラ  それはね・・・

マリネ  トクチ・・・

マリネ  貴方はここに来てはいけない

マリネ  過去の私に囚われてはいけないわ

マリネ  だから、ね、お願い・・・

モーグ  やっぱり僕はトクチを探し出すよ!

テルデ  モーグ・・・

モーグ  トクチの家に何度来てもいないみたいだし、きっと何かに巻き込まれたんだよ!

テルデ  落ち着けよ!

テルデ  俺らじゃ何もできないよ。第一、どこに行ったか分かってるのか?

モーグ  そんなの分かる訳ないよ!

モーグ  だから、こうやって、トクチの家に忍び込んで手掛かりを探しているんだろ!

テルデ  ホント・・・お前馬鹿じゃないのか!?

テルデ  なんでそんなに熱くなってるんだよ!お前とトクチは特に仲が良いわけでもないだろ?

テルデ  そんなの大人に任せておけよ!

モーグ  そうだけど・・・テルデは良いのかよ!

モーグ  大人たちは何もしてくれないし、僕らしか助けてあげることはできないだろ!

モーグ  いくら話しても、大人はみんな自分の事でしか考えていないんだ・・・人ひとりが居なくなってるのに・・・それなのになんで動いてくれないんだよ!

モーグ  もしも僕がこの村から突然居なくなった時、誰も探しにこなかったら僕は嫌だ

モーグ  誰かが探しに来てくれるって信じたい

モーグ  ・・・だから、僕はトクチを探しに行きたいんだ

テルデ  だからって俺たちだけでどうにかできる問題じゃないだろ

テルデ  ・・・どうするんだよ?

モーグ  (被せて)あーーーーっ!

テルデ  どうした?

モーグ  腕や足が外れたロボットが落ちている・・・

モーグ  あちらこちらに焼け焦げた跡もあるし、これはやっぱり何かに巻き込まれたんじゃ・・・

テルデ  ・・・元々、トクチのかーちゃんはエンジニアだったんだ。部屋にも色んなロボットがあるし、普通のことだよ

モーグ  むー・・・

テルデ  ・・・でも、そっか、俺もこのロボットとかカートで遊ばせてもらってたんだったな

テルデ  見覚えのあるロボットがいくつかあるし

テルデ  トクチのかーちゃん、優しかったんだよなぁ

テルデ  ロボットを壊しちゃっても、いつの間にか直して、笑って許してくれたし

テルデ  今思えば、本当に人が中に入っているんじゃないかっていうくらい、ロボットもよくできてたよな

モーグ  あーーーーっ!

テルデ  なになに?

モーグ  なにこの大きなドリル!カッコいい!!

テルデ  ああ、それは地中を掘るためのドリルだよ

テルデ  前に見たことがある。これを機械に装着して岩壁を掘って行くんだ

モーグ  スッゲーー!俺たちの周りを囲む岩壁を掘れるのか!

テルデ  ああ、すごいんだぜ!

テルデ  村の端に立入禁止になってる場所があるだろ?

テルデ  昔はあそこの岩壁を、このドリルで掘り進めていたんだ

モーグ  えー見たかったなー!

モーグ  今は掘ってないの?

テルデ  ・・・ああ。今は掘ってないな

モーグ  なんでだよ!見たかったのになぁ

テルデ  トクチのかーちゃんが掘ってたんだよ。その壁を

モーグ  え・・・

テルデ  掘ってる途中で壁が崩落してしまって、運悪くトクチのかーちゃんは閉じ込められてしまった

テルデ  すぐに助けに行けば助かったはずなのに、村の大人たちは危険だから、失敗したらいけないからって言って何もしなかった・・・殺されたも同然だ

モーグ  え・・・

テルデ  それ以来、あの岩壁周辺は立入禁止。俺たちの村も資源を得るための開拓もできなくなったって事さ。

テルデ  それに一番憤っていたのは、やっぱりトクチだったな・・・

モーグ  そうなんだ・・・辛かっただろうな・・・

テルデ  ああ・・・

モーグ  僕、やっぱりトクチの味方になってやりたい・・・

テルデ  ・・・お前、やっぱりバカだな

モーグ  へへっ

テルデ  まあ、嫌いじゃないよ

モーグ  (被せる)あーーーーっ!

テルデ  ・・・今度はなんだよ

モーグ  ・・・テルデ・・・これ・・・

テルデ  ・・・血だ・・・

トクチ  万有結晶伝導率(ばんゆうけっしょうでんどうりつ)が全然安定しない……

トクチ  こんなんじゃ、何年かかっても蒸気噴流銅鋼大壁(じょうきふんりゅうどうこうたいへき)【ドーラ・ドーラ】の向こうになんて

トクチ  脱国できやしない……

ウニラ  脱国したいの?

トクチ  当たり前だろ!この国の皆がそう思ってる!

ウニラ  みんな?本当にそうかな

トクチ  そうかなって……

ウニラ  この研究でさ、出来上がるものがなんなのか、トクチーは知ってるの?

トクチ  それは……

ウニラ  やっぱり。よくわかってないんでしょ。

トクチ  わかってるさ!!この装置が、この『ゴルディウスハンマー』があれば。

トクチ  壁を壊して、あのラクリマ結晶で溢れた、『虹色の国』に行けるんだ。

ウニラ  誰が?

トクチ  み、みんながだよ!

ウニラ  それは違うなあ、トクチー。

トクチ  え……?

ウニラ  だって、『ゴルディウスハンマー』はさ、それで完成じゃないんだから。

場転

ネネリ  う、うう……

モーグ  ラ、ラルテ!大変だ!ヒトが倒れてるよ!

テルデ  モーグ!下手に動かすなよ、頭を打ってたら動かしちゃいけないって

テルデ  昔、鉱石ラジオで聞いたことがある。

モーグ  う、うん、わかった

ネネリ  あ、あなたたち……

モーグ  だ、大丈夫ですか……?

ネネリ  え、ええ。機械の誤作動で……岩盤が落ちてきて……

テルデ  機械の誤作動って……こ、これ『モースインパクト』じゃないか!

モーグ  知ってるの?ラルテ。

テルデ  むしろなんで知らないんだよ!

テルデ  ラクリマ結晶をモ式アドセンスでピィアモールして、

テルデ  サムハンするためのコーカサスオオカブト導体のひとつじゃないか!

モーグ  ごめん、エンジニアの授業碌に聞いてなかったから……

ネネリ  それに触ってはダメよ……その、貴方の上の穴にも気を付けて……

テルデ  穴?穴って、うわ!すごい穴があいてる!

モーグ  ど、どんだけの威力があったらこんなに大きな穴があくのさ!

ネネリ  ヒトひとり……いえ、国を吹き飛ばすほどの威力があるわ……

テルデ  ひえっ

ネネリ  あなた達……もしかして……エッサム村の出身?

モーグ  なんでわかるの?

ネネリ  言葉のなまりが、ね

テルデ  すごいや、お姉さんは外国のひと?瞳の色が綺麗な瑠璃色だ。

ネネリ  そう、ね。あの『ドーラ・ドーラ』の向こうから、大昔にやってきたのよ

モーグ  『ドーラ・ドーラ』の向こうから……?

モーグ  な、なんで?あの壁の向こうは楽園が広がってるんだろう?

モーグ  なにもこんな、蒸気と瘴気(しょうき)に囲まれた辺境(へんきょう)の国に来ることないじゃない。

ネネリ  『楽園』……?

テルデ  そうだよ、みんなあの壁を越えたがってる。

テルデ  空気はうまいし、ラクリマの純結晶(じゅんけっしょう)だらけの楽園なんだろう?

テルデ  酸素が綺麗すぎて、空なんてお姉さんの瞳の色みたいに青いって聞いたよ。

ネネリ  ……うそよ。

テルデ  え?

モーグ  うそ?

ネネリ  そんな楽園、どこにも無いわ。

テルデ  な、なんてこと言うんだよ

モーグ  そ、そうだよ

ネネリ  ないのよ!楽園なんてない!!!

ネネリ  だって、だって、この街が!この壁の内側が唯一

ネネリ  私たち人類に残された……『楽園』そのものなんだから……!

場転

ウニラ  『流動型 生物兵器KPBR(ケーピービーアール)』

トクチ  けーぴー……なんだって……?

ウニラ  君たちにはこう説明したほうがいいのかもしれない。

ウニラ  『簡易式鬼天竺鼠(かんいしきおにてんじくねずみ)』。

ウニラ  この壁を、この世界を、境界線ごとアジャスタロファする、最強の生物兵器。

ウニラ  その為の鍵が、『ゴルディウスハンマー』なんだよ、トクチー。

トクチ  ……ウニラ、お前、いったい……。

トクチ  ……ウニラ、お前、その喋り方……

トクチ  それに……瞳の色も……

ウニラ トクチの反応を意に介さず、部屋の中を歩き、トクチーに背を向けて話し続ける

ウニラ  やっとブートローダの呼び出しが終わったよ。

ウニラ  初期設定の僕じゃ、材料だけあっても完成には至れない。

ウニラ  猫に小判、下駄に饅頭、カタツムジにペントハウスさ。

トクチ  ……?

トクチ  ……猫に小判以外、言ってる意味がわからない……。

ウニラ 棚の前で立ち止まり、写真立てに飾られた写真を眺めながら話す、背は向けたまま

ウニラ  あれ?そうなの?

ウニラ  この時代じゃもう使われてないのかな。

ウニラ  全部似たような意味だよ、「価値のわからない者に貴重な物を与えても意味がない」っていう……

トクチ  そうじゃなくて!

トクチ  いや、そのことわざっぽい謎の言葉もそうなんだけど……。

トクチ  ブートローダ?初期設定?

トクチ  ウニラ……それじゃまるで……君が……

ウニラ  間違ってないよ、トクチ。

ウニラ 振り返る、瞳の色が瑠璃色に変わっている。

ウニラ  僕は、ロボットだ。

ウニラ  今から320年前。君の母親、マリネ博士に作られた……ね。

場転

モーグ、テルデ 助けた女性から話を聞かされている。

テルデ  そんな……。

モーグ  嘘だよね……?

ネネリ  ……(唇を噛み締め下を向く)

テルデ  そんな……そんなの嘘だよ!!『ドーラ・ドーラ』の外が、

テルデ  壁の向こうが、ヒトが生きていけない死の世界だなんて!!

モーグ  そ、そうだよ!それに、現にお姉さんは外から来たって……

ネネリ  「大昔」に、ね……。

モーグ  え……?

ネネリ  300年程前……私達の祖先はまだ地上で暮らしていたわ

ネネリ  ある日、祖先達の前に一人の預言者が現れこう預言したそうよ

ネネリ  【俗ヴォヂャノトゥス暦666年、災厄が飛来する。

ネネリ  災厄の名はチャラニョえもん、地上から生命は消え去るだろう。】って……

テルデ  俗ヴォヂャノトゥス暦666年……それって……

モーグ  旧暦……だよね……?しかもその年って……

モーグ  新暦の……聖ガルバリウム歴が始まった年……?

ネネリ  えぇ、預言通り、666年にその厄災はやってきたわ。

ネネリ  巨大な隕石、チャラニョえもんが地上から全ての生命を奪いに。

ネネリ  でもね、預言者は、私たちが生き残る道も示してくれていた。

ネネリ  地下に潜り、巨大なシェルターを作りなさい……と。

モーグ  シェルター……あっ、じゃあもしかしてそれが……

テルデ  蒸気噴流銅鋼大壁(じょうきふんりゅうどうこうたいへき)【ドーラ・ドーラ】……?

ネネリ  えぇ、そうよ……。

ネネリ  だから、壁の向こうは楽園なんかじゃないの……。

モーグ  …………

テルデ  ……でも、お姉さんはどうしてそんなこと知ってるの?

テルデ  村の人たちは一人もそんなこと言ってなかったよ?

モーグ  た、確かに!それにこんなところに一人でなにを……?

ネネリ  私は……

ネネリ  私は預言者マリネの血を引く末裔……ネネリよ……。

場転

トクチの部屋 ウニラとトクチが向かい合い、立ち尽くすトクチ

トクチ  ………………え?

トクチ  ……なに……言って……?

トクチ  ウニラを母さんが作った……?320年前……?

ウニラ  ……あぁ、その様子だと、やはりマリネ博士は岩盤崩落(がんばんほうらく)で死んだと思っていたのかな?

トクチ  ……!?

トクチ  生きて……るのか……?母さんが……?

ウニラ  「今」はもう、死んでいるよ。

トクチ  っ!?…………意味が……分からない……

トクチ その場によろよろと座り込む

ウニラ  今が俗ヴォヂャノトゥス暦728年。

ウニラ  あぁ、新暦だと聖ガルバリウム暦62年……だったかな?

ウニラ  今から5年前、旧暦で言うところの723年。

ウニラ  マリネ博士は、岩盤の掘削(くっさく)作業中、崩落に巻き込まれ閉じ込められた。

ウニラ  ここまではいいかな?

トクチ  あ、あぁ……

ウニラ  今から話すのは、誰も知らない……その先の真実だ。

場転

5年前 岩盤崩落により閉じ込められたマリネが気を失って倒れている

マリネ  ……ん……ん……

マリネ  …………ここは……?

マリネ  っ、そうだわ……私、岩盤に閉じ込められて……

マリネ  かなり大きい崩落だったのに、五体満足なのは奇跡ね……

マリネ  でも……この岩……

マリネ 目の前を塞ぐ大きな岩盤を触り確かめる

マリネ  ライデンタイト鉱石……どうりで……

マリネ  周りが良く見えるのはこの子のおかげね……

マリネ  それにしても……

マリネ  ネリネリネリネの地盤の上に、こんなに大きなライデンタイトがあったなんて……

マリネ  どうしましょう、今の装備じゃライデンタイトは削れないし……

マリネ  村の人たちもきっと……崩落した付近には近づきたくないでしょうね……

マリネ 考え込んでいるマリネの後方、坑道の奥で瑠璃色の光が瞬きだす

マリネ  ……?

マリネ  何かしらこの光……?

マリネ  ライデンタイトとは別……?

マリネ  ……瑠璃色の……光……?

マリネ 坑道の奥へと進む

マリネ  これだわ……初めて見る鉱石ね……

マリネ  ……綺麗……

マリネ 吸い込まれるように鉱石に触れる

マリネ  きゃっ!!

瞬間、鉱石がより一層強く光り、坑道内が瑠璃色の閃光に包まれる

光が収まると、マリネの姿がなくなっている

場転

マリネ 無重力の暗闇の中、一人浮いている

マリネ  これは……なに……?

マリネ  一体……何が起きたの……

目の前の暗闇に突如地球が表れ、彼方から巨大な隕石が近づいている映像が流れる

同時に断片的な情報がマリネの脳内に直接流れ込む

マリネ  っ、言葉が……頭の中に……

マリネ  あれは……地球……?

マリネ  遠くに見える……あれは……

マリネ  隕石……地球に……衝突……

マリネ  そんな……これが……過去に人類を地中に追いやった厄災(やくさい)……

マリネ  「チャラニョえもん」……

マリネ  ドーラ・ドーラの外は……楽園じゃなかった……

マリネ  守るための……シェルター……

映像が光の粒となって収束していき、現在の地球の映像に変わる

マリネ  ……これは……5年後の地球……?

遥か彼方から、再び巨大な隕石が近づいている映像が流れる

マリネ  そんな……もう一度……来るっているの……

マリネ  「チャラニョえもん」が……

再び映像が光の粒となって収束し、瑠璃色の閃光が辺りを包む

場転

マリネ 広大な青空の下、草原の真ん中で目を覚ます。瞳が瑠璃色に変わっている。側にはサッカーボールほどの瑠璃色の鉱石が一つ落ちている

マリネ  ん……ここは……天井が青い……眩しい……まさか……

場転

現代のトクチーの部屋 ウニラの語りに戻る

ウニラ  瑠璃色鉱石(るりいろこうせき)の力はまさに未知数。

ウニラ  マリネ博士に過去現在未来のヴィジョンを見せ、そのあと過去の世界に飛ばしてしまった。

ウニラ  目覚めた時には中国の草原地帯にいたそうだよ。

ウニラ  大きな瑠璃色鉱石の塊と一緒にね。

トクチ  …………待ってくれ……頭が追いつかない……

トクチ  母さんは崩落では死んでいなくて、不思議な鉱石の力で過去に飛ばされていた……?

トクチ  過去の世界でウニラを作って、その時代で死んだってことなのか……?

ウニラ  なんだ、しっかり理解できているじゃないか。

ウニラ  さすが、博士の息子だ。

トクチ  言葉では理解したつもりだ……だけど……そんなのって

ウニラ  まぁ、僕の頭がイカれててそんな妄言を吐いてる可能性も無くはないよね

トクチ  いや……現に君のことは初めて見る、それなのに母さんのこと知ってるし……

ウニラ  まだ続きがある、そこまで頭に入ってるなら続きを話しても?

トクチ  ……わかった、続けてくれ……

場転

モーグ、テルデ ネネリの話を聞く。

モーグ  預言者マリネ……聞いたことないなぁ

テルデ  ……マリネ……?

モーグ  テルデ?どうしたの?

テルデ  トクチのかーちゃんと同じ名前だ……。

モーグ  えっ?

モーグ  ……偶然?

テルデ  ……いや、そういえば、ネネリさんの顔……

テルデ  どことなく……トクチのかーちゃんに似てる……

モーグ テルデ 顔を見合わせ、ゆっくりとネネリを見やる。

ネネリ  ……そう、やっぱり。預言者マリネは未来人だったのね……。

モーグ  え……それってどういう……?

ネネリ  預言者マリネの予言の一部が、あまりにも詳細だったのよ。まるで実際に見てきたみたいに。

テルデ  予言……?チャラニョえもんが降ってくるってだけじゃなかったの?

ネネリ  えぇ……チャラニョえもんの飛来、ドーラ・ドーラの建設、そして……

ネネリ  更に巨大なチャラニョえもんの飛来と、それを打ち砕く術(すべ)と場所……

モーグ  えーーーーーーーー!!!!!!

テルデ  っ!だから!うるさいぞモーグ!!!

モーグ  だ、だってだって!テルデはびっくりしないの!?

モーグ  もっと大きい隕石なんて、地球は今度こそ死んじゃうよ!

テルデ  だ!か!ら!その後に言ってたろ!それを打ち砕くすべもあるって!

テルデ  トクチのかーちゃんかも分からないし、

テルデ  なんでそんなことしてるのかは分からないけど

テルデ  とにかく、話を聞いてみよう。

モーグ  う、うん……そうだね!

ネネリ  打ち砕く術は、ここにあるって話だったの。

ネネリ 頭上の大穴を指差す

モーグ  ここ……?

テルデ  この大穴が……?

ネネリ  正確には、ここに埋まっていたはずの何かが……

モーグ  埋まっていたはず……そういえばさっき……

テルデ  モースインパクトの誤作動が……

ネネリ  えぇ……少しだけ掘るつもりだったのだけど……

ネネリ  反動のショックで気を失ってしまっていたところを貴方達に助けてもらったの

モーグ  ケガがなくて良かったね……

テルデ  でも……こんな大穴開けちゃったら……

モーグ  ネネリさん以外何もなかったよね……

3人 顔を見合わせて

テルデモーグネネリ  どーーーーーーーーーーーしよーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!

場転

トクチの部屋 トクチとウニラ再び話を再開している

トクチ  ウニラが……『簡易式鬼天竺鼠(かんいしきおにてんじくねずみ)』……?

ウニラ  あぁ、そうさ。

トクチ  ……って、なんだ?それ?

ウニラ  あれっ!?

ウニラ  ……なんだ……僕のことも伝わっってないのか……

ウニラ  まぁ、人づての伝言ゲームみたいなものだし……300年も経てばこんなものなのかな?

トクチ  さっき、ゴルディウスハンマーが鍵だとか言ってたよな……?

トクチ  でも、ゴルディウスハンマーはドーラドーラを壊すためのものなんじゃ……?

ウニラ  そうだね……もうあまり時間がないから、簡潔に説明するけど……

ウニラ  マリネ博士がその設計図を書いたときは、確かにドーラドーラを破壊するのが目的だった。

ウニラ  だがマリネ博士は、過去へ飛ぶ瞬間に世界の真実を知った。

トクチ  ドーラ・ドーラの外の世界……再び訪れる災厄(さいやく)……。

ウニラ  そう、過去に飛んでしまった彼女は、未来を守るために様々な試みを行った

ウニラ  その一つがドーラ・ドーラだ。彼女は瑠璃色鉱石に魅せられたビジョンと、実際に育った時に見た記憶を元に

ウニラ  過去の世界で第一の災厄に備えられるようドーラ・ドーラを建設した。

トクチ  ドーラ・ドーラも母さんが……!?

ウニラ  そして二つ目が、瑠璃色鉱石の研究だ。

ウニラ  マリネ博士が過去に飛ばされた際、傍に瑠璃色鉱石の塊が落ちていたと言ったろ?

ウニラ  彼女はその鉱石を過去の世界で、今は失われているテクノロジーを駆使し研究を重ねた。

ウニラ  その結果、瑠璃色鉱石は地球上でまだ発見されていない物質であり、外部からの熱を内部に蓄積し、

ウニラ  膨大なエネルギーをためこめることがわかった。

トクチ  地球上の物質じゃ……ない……?!

ウニラ  そう、そして彼女は一つの仮説を立てた。

ウニラ  瑠璃色鉱石は、宇宙から飛来してきた隕石なんじゃないかと。

トクチ  え……それじゃまるで……

ウニラ  チャラニョえもん、みたいだろう?

ウニラ  それがなぜシェルター内部の坑道(こうどう)にあったのかは分からない。

ウニラ  もしかしたら、チャラニョえもんが来るよりも更に昔に飛来していたのかもしれない。

ウニラ  真実はどうであれ、彼女はこの瑠璃色鉱石を使って、2度目の厄災を打ち払おうと決めた。

トクチ  それって……つまり……?

トクチ  瑠璃色……っ、ウニラ、お前の瞳の色、まさか……!

ウニラ  ご明察(めいさつ)……、僕の動力は、瑠璃色鉱石だ。

ウニラ  それも、300年分の地熱を蓄えた、スーパーノヴァクラスのエネルギーを持った、ね。

トクチ  瑠璃色鉱石を動力とした簡易式鬼天竺鼠(かんいしきおにてんじくねずみ)……

トクチ  ドーラ・ドーラの壁を壊すのに特殊な鉱石が必要だったゴルディウスハンマー……

トクチ  まさか……

ウニラ  ふふ、本当に君は博士に似ているね。

ウニラ  僕は、君たちの未来を救いに過去からやってきた……

ウニラ  『流動型 生物兵器KPBR(ケーピービーアール)』

ウニラ  『簡易式鬼天竺鼠(かんいしきおにてんじくねずみ) ウニラ』

ウニラ  ……いわゆる、ヒーローってやつさ。

場転

モーグ、テルデ、ネネリ 3人とも項垂れしょんぼりしている

モーグ  はぁ……こんなことなら先週の移動屋台でお小遣い全部使えば良かった……

テルデ  俺も……ハルハラールザッカニアとケチャブル因子(いんし)における空穿(くうせん)ペール留意反応についての考察の本買っておけば良かった……

モーグ  もう!そんなの買ったって滅んじゃうんだから!美味しいもの食べてる方がいいだろ!

モーグ  水氷鳥の千々飴(すいひょうどりのちぢあめ)とかおばけトマトのカポナータとか~!

テルデ  モーグはいつも食べ物のことばっかり!いーんだよ!俺は!!

テルデ  自分の方舟(はこぶね)をもっと早く飛ばす為にリイン領域の超寸間(ちょうすんかん)ラッシュフォールド磁場の勉強とかしたかったんだよ~!!

ネネリ  ふ、二人とも落ち着いて……!!

そこにトクチ、ウニラが走って寄ってくる。

トクチ  おーーーい!!モーグーー!テルデーー!

モーグ  あっ!トクチ!!!

テルデ  えっ!!あっ、本当だ!あいつ元気じゃん!

トクチ  ここにいたのか二人とも……探したんだぞ……!

テルデ  探したのはこっちだよ!トクチの部屋に行ったら、部屋は荒れてるわ、血痕(けっこん)がついてるわで大騒ぎだったんだぞ!

モーグ  そうだよ!怪我はない?トクチ!

トクチ  部屋が荒れてるのはいつものことだろ!あー、あと、その血は……

ウニラ  トクチが座ってた後、足が痺れてうまく立てなくて転んだんだ。

トクチ  ウニラ!うるさいぞ!

モーグ  君は……?トクチの新しい友達……?

ウニラ  こんにちは、僕の名前はウニラ。

ウニラ  そっちのお姉さんも、無事で良かった。

ネネリ  え……?私……ですか……?

ウニラ  うん、お姉さんが僕をここから掘り出してくれたんでしょ?

ネネリ  え……掘り出す……あなた……まさか……!!

ウニラ  ふふっ、その瞳の色、マリネ博士の遠い末裔(まつえい)、だね?

ネネリ  ……じゃあ、あなたが……!!

ウニラ  掘り出してくれた時、置き去りにしてごめんね。

ウニラ  ブートローダからの呼び出しが終わってなかったから、初期設定の僕じゃ何も分からなくて置いてきてしまった。

ネネリ  ……良かったっ……私てっきり粉々に砕いてしまったのかと……

ウニラ  大丈夫、なんせ僕はチャラニョえもんを打ち砕くために作られたんだからね。

モーグ  あのー……話がなんとなくでしか分からないんだけど……

トクチ  お互いの詳しい自己紹介は後!今は時間がないんだ!

テルデ  そういえば、血相(けっそう)変えて走ってきたけど……

トクチ  テルデ!お前の方舟(はこぶね)!飛ばしてくれ!!

場転

エッサム村、テルデの家 5人はテルデの方舟でドーラ・ドーラの内部天井を目指そうとしている。

テルデ  準備できたぞ!後はこのラクリマ結晶をバリタントすればリイン領域を展開して超寸間(ちょうすんかん)ラッシュフォールド磁場で

モーグ  説明はいいから!早く飛ばしてよ!テルデ!

テルデ  ロマンがないなぁー!最終決戦前のパワーアップ内容はスポットライトが当たるべきだろ!

モーグ  もたもたしてたら決戦する前に最終になっちゃうんだってば!

モーグ、ラクリマ結晶を叩きブースト起動

モーグ  えいっ!

テルデ  あー!お前っ、もっと大切に扱えよなー!発進だって大事な見せ場なのにー!

方舟の四方にあるラクリマ結晶が虹色に輝き特殊な磁場が形成され方舟が宙に浮く

モーグとテルデが後ろで言い争っている

トクチ  ネネリさん……過去の世界に飛んだ母さんが……残してきた血筋(ちすじ)……

トクチ  本当に……なんとなく母さんに似てる……

ネネリ  トクチさん……預言者マリネ様の息子さん……

トクチ  こういうのって……なんて呼んだらいいんだ……?

ネネリ  恐らく……高祖叔父(こうそしゃくふ)かと……?

トクチ  聞いたことないよそんなの!

ウニラ  ふふ、本当に不思議な縁だよ。

トクチ  ウニラ……大丈夫か?

ウニラ  大丈夫さ、必ず成し遂げてみせるよ。

ゴルディウスハンマーを装備したウニラ。巨大で重々しい砲身が右半身に装着されている。

テルデ  みんな!そろそろドーラ・ドーラの天蓋排口(てんがいはいこう)だ!

テルデ  モーグ!時間は!?

モーグ  23時59分!27……29……30!

モーグ  あと30秒で夜間蒸気噴流(やかんじょうきふんりゅう)が始まるよ!

トクチ  わかった!このまま蒸気噴流(じょうきふんりゅう)ごと外の世界に飛び出すぞ!

トクチ  ウニラ!ネネリさん!本当にもうすぐそこまでチャラニョえもんが来てるんだよね!?

ネネリ  えぇ!マリネ様が観測された未来の予言!

ウニラ  俗ヴォヂャノトゥス暦728年の6星6陽 洗礼日!

ネネリ  時間にして0時5分ごろ、成層圏(せいそうけん)近くまで来ているはずです!

トクチ  わかった!ドーラ・ドーラの外がどうなっているか分からない!

モーグ  蒸気噴流(じょうきふんりゅう)の熱もあるから、ドロネズミのマントをかぶって!

テルデ  (各々が返事、タイミングは重なってOK)了解!

ネネリ  (各々が返事、タイミングは重なってOK)はい!

トクチ  (各々が返事、タイミングは重なってOK)あぁ!

ウニラ  (各々が返事、タイミングは重なってOK)わかった!

5人がマントを被ると、頭上のドーラ・ドーラの排口が開き始める

テルデ  それじゃ、いっくぞー!!!

方舟が排口に突入、途端に凄まじい風圧と蒸気が方舟を押し上げる

ネネリ  きゃー!

モーグ  ネネリさん!捕まって!

トクチ  テルデ!方舟(はこぶね)は平気か!!

ラテ  これ……くらいでっ!ラッシュフォールド磁場は……揺るがないよっ!

ウニラ  みて!外に出るよ!!

排口の終わりがみえ、かすかに赤い光が差し込んでいる

トクチ  うぉぉぉぉぉぉぉぉっ

ドーラ・ドーラの外へ放り出される方舟

地上は見渡す限り荒れ果て、草木も死滅した死の世界が赤い光に照らされて広がっている

トクチ  ……これが……外の世界……

テルデ  ……すごい……広い……

モーグ  うわぁぁ!みんな!上を見て!!!

モーグが指差す先、上空を覆い尽くさんばかりの巨大な赤い隕石が煌々と燃え盛りこちらを見ていた

ネネリ  ひっ……これが……チャラニョえもん……!!

ウニラ  なんてデカさだ……!!

トクチ  ドーラ・ドーラの何倍もあるじゃないか……!!

トクチ  ウニラ!行けるか!?

ウニラ  っ……任せて!!そのために、マリネ博士のもとを離れ、300年も地中で眠っていたんだ!!

ウニラ ゴルディウスハンマーをチャラニョえもんに向けようとする

ウニラ  ぐっ……!

急上昇していく方舟にかかるGに、砲身が上手く定まらない。

トクチ  俺が……支える……っ!

モーグ  僕も……!

ネネリ  私も……!

ウニラ  君たち……!!

3人がウニラの体や砲身を支える

テルデ  俺は……運転があるから無理……っ!っせいぜい!揺れないように……して……やるよーっ!

テルデGを受けつつ方舟を安定させるため舵をとる

4人の協力で砲身が定まる

ウニラ  ふっ……ふふふっ……

ウニラ、キッと隕石を見据えて引き金をひく

ウニラ  ゴルディウスハンマー装填(そうてん)!……チャージ開始っ!

ウニラ  5!

ネネリ  4!

トクチ  3!

モーグ  2!

テルデ  1!

5人  いっけえええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!

瞬間、ゴルディウスハンマーから放たれる瑠璃色の閃光

あたりにキィンという音が鳴り、雲を突き抜け、真っ直ぐに宙へと閃光が伸びていく)

5人  砕けろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉおぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!

赤い隕石に瑠璃色の閃光が走り、数瞬の後

巨大な火花をあげバラバラに砕けていく隕石

ネネリ  や、ヤッタァぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

ウニラ  うわっ、急に離さないで……!

ネネリが手を離し体制が崩れウニラたちが倒れる

ネネリ  あっ……

5人  ぷっ……あははははは!!!!!

5人の笑顔の中、粉々に砕けた隕石が花火の残火のように空を流れていく

トクチ  ありがとう……ウニラ……

ウニラ  ……言ったろ……必ず成し遂げてみせるって……

トクチ  ……へへっ……さすが……

トクチ  俺の弟だな!!

ウニラ  ……え……?

トクチ  だって、母さんがお前を作ったんなら、そういうことだろ……!

トクチ 照れ臭そうにそっぽを向く

ウニラ  …………ふふっ、それをいうなら、僕の方が過去に生まれてるから君が弟だ、トクチ。

トクチ  なっ!なんだと!俺の方が先に……いや……未来で生まれたけど……母さんが最初に産んだのは俺であって……

モーグ  やったねトクチ!家族が増えるよ!

テルデ  おいやめろ

モーグ  なんで?

テルデ  いや……なんかそう言わなくちゃいけない気がして……

モーグ  変なテルデー!

ネネリ  まぁ!じゃあウニラさんも私の高祖叔父(こうそしゃくふ)ですね!

ウニラ  ええっ!?

5人の笑い声でフェードアウト

地上に降り注いだ小さな隕石と瑠璃色鉱石の光は、大地を耕し、氷を溶かし、草木が芽吹き始めていた……

ーENDー


おまけ

SpecialThanks ひまりねね

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らての台本置き場

はじまめして!らて@放浪作家です! このサイトはシナリオライターのらてが執筆したシナリオを置いておく場所になります。 声劇や劇団のインプロ、演劇部の上演に使っていただいても構いません! 皆様こぞってご上演ください! ※上演前に必ず利用規約をお読みください

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