作品名の後の数字は「男:女:性別不問」の比率になっております。

[4:1:1]となっていたら

・男性4人、女性1人、男女どちらがやってもいい役が1人

という感じです。

あくまで台本選びのガイドなので、これを必ず守らないといけないというものではないのでご了承ください

※上演の際は必ず「利用規約」をお読みください

帰郷 [1:2:0]

三上はるか役の方は以下を担当

はるか

涼香

・三上泰明(父)役の方は以下を担当

泰明

慎吾

・三上由美(母)役の方は以下を担当

由美

医師

0:土曜の朝、一軒家のダイニング

0:母は朝ご飯を作り、父はテーブルに座り地方紙に目を通している

0:窓の外は白くホワイトアウトしており、その先からは朝の蝉の声が微かに聞こえてくる。

0:と、ドアを開けてはるかが登場する。

はるか:んー・・・おはよう

0:両親はそれぞれの手を止めて、少し驚いたような表情で娘を凝視する。

0:眠い目をこすって、ゆっくりとテーブルに座る娘

はるか:ん?おはよう

泰明:ああ・・・

はるか:ん、お父さんどうしたの?

由美:・・・

はるか:お母さん?

由美:あ、ええ、おはよう

はるか:うん、おはよう

泰明:遅かったな

はるか:えー、いいじゃん土曜日なんだし

泰明:いや、別に怒ってないよ

はるか:おかあさん、朝ご飯なにー?

由美:何って、普通よ

はるか:え、何普通って

由美:普通は普通よ

由美:ごはんと、お味噌汁と、コロッケ

はるか:コロッケ・・・え?コロッケ?

由美:そう、コロッケ

はるか:コロッケは普通じゃないよ

由美:普通よ

はるか:普通じゃないよ

由美:昨日揚げすぎちゃったのよ

はるか:なんかほかのないの?魚とか

由美:ないの、おいしいよ?コロッケ

はるか:いや、おいしいのはわかるけどさあ・・・

泰明:ふふっ

はるか:え、お父さん何笑ってるの

泰明:あ、いや・・・

はるか:普通じゃないよね?コロッケ

泰明:ん?

はるか:え?

泰明:何?どうしたの?

はるか:・・・もういいよ

泰明:えー、なんだよ

はるか:もういいよ、いいよコロッケで

由美:いいよもなにも、コロッケしかないからね

由美:ほらあなた、テーブル片付けて

泰明:ん、うん

由美:はるか、箸出して

はるか:はーい

泰明:母さん、ゴミのやつ

由美:ああ、冷蔵庫貼っといて

泰明:ん

由美:あーそっちじゃなくて

泰明:ん?

由美:クリップの方

泰明:こっち?

由美:そうそうそっち

泰明:あい

はるか:ねえねえ、お父さんの箸これだっけ?

泰明:ん?

はるか:いや、箸

泰明:ああ、それそれ、よく覚えてたな

はるか:え?だって毎朝これじゃん

泰明:ふふっ

はるか:え?なんで笑うの

泰明:いや、なんでもないよ

はるか:気持ち悪い

由美:ほら、食べるよ、座って

はるか:はーい

泰明:(コロッケを見て)・・・ええ?

由美:何よ

泰明:・・・朝からコロッケ?

はるか:お父さんもうそのくだり終わったから

泰明:なんだくだりって

はるか:はい、箸

泰明:ああ、ありがとう

由美:はいじゃあ、いただきます

泰明:いただきます

はるか:いただきまーす

0:もくもくと食べ始めるはるか

0:が、泰明と由美は箸を置いて、はるかが食べる姿を微笑んで見ている

はるか:あ、そうだ、お母さんあれ書いてくれた?

由美:うん?

はるか:面談の紙、月曜提出だからさ

由美:うん

はるか:(二人と目を合わせず、ひとりごとのように)毎回思うけどさ、面談ってあれみたいじゃない?

はるか:ほら、刑事さんがさ、かつ丼食えよってやるやつ

はるか:別に悪い事してないのにいろいろ聞かれて、こっちだって言いたいことあるのにさ

はるか:西村とか河村とかならわかるよ?あいつらは面談ってよりか逮捕だね、逮捕

はるか:いっつも悪さばっかりして

由美:でもその西村君と、結婚したんじゃない

はるか:え?

0:間

はるか:あれ?食べないの?

由美:うん、お腹すいてないから

はるか:でも、準備したのに・・・お父さんも?

泰明:まあな

はるか:そっか・・・てかなに?結婚?

由美:うん、西村君、いい子だったと思うわよ、ねぇ?

泰明:ああ、まあな

はるか:ええ・・・?そうかな・・・

泰明:嫌いなのか

はるか:んー・・・まあ、嫌なやつではあったけど・・・

泰明:ははは、嫌よ嫌よも好きのうちってか

はるか:そんなんじゃないって

泰明:でも告白、お前からしたんだろ

はるか:それは、それはさ、なんていうか

泰明:なんていうか?

はるか:・・・

泰明:あはは

泰明:まあほら、男の子はみんな悪いことをするもんさ

泰明:とくに中学生くらいだとさ、自分の中のこう、もやもやしたいろいろのバランスが取れなくなって、いろんなことしたくなっちゃうんだよ

はるか:お父さんもそうだったの?

泰明:ええ?

はるか:お父さんも悪い事した?

泰明:お父さんは・・・

はるか:した?

泰明:お父さんは真面目だったぞ

はるか:えー?

泰明:お父さんは生徒会長だったからな、模範的な生徒だったよ

はるか:へぇー

はるか:・・・お母さん

由美:裏山のボヤ騒ぎ、主犯格

泰明:ぐっ

由美:合唱コンクール、ボイコット

泰明:げっ

由美:給食の牛乳でヨーグルトを作ろうとして、異臭騒ぎ

泰明:ぐぎっ

はるか:ワルガキだ

泰明:母さーん、言うなよー

由美:馬鹿よねー

はるか:うん、馬鹿だね

泰明:だから、男の子っていうのはそういうもんなんだよ

はるか:ふーん

泰明:現に西村くんだっていい男になったじゃないか

はるか:ええ?

泰明:優しいし、男前だろ?

はるか:うーん・・・

はるか:まあね?

泰明:そういうもんなんだよ、男の子っていうのは

はるか:ふーん・・・

0:間

由美:ほら、はるか、あったかいうちに食べちゃいなさい

はるか:あ、うん・・・

0:食べ始めるはるか

泰明:でも、はるかも係長か、すごいよな

はるか:え?

由美:ほんとよね、泣き虫のはるかが

はるか:またそれいう、やめてよ

由美:ほんと泣き虫だったんだから

由美:ほら、昔釣りに行った時、あれどこだっけ?凍ってるとこ

泰明:諏訪湖

由美:そうだ長野だ

由美:はるか、テンション上がって、走っちゃいけないっていうのに走って、案の定転んで大泣き

はるか:そんなことあったっけ?

由美:泣いてばっかだったじゃないあんた

泰明:だな

はるか:むー・・・

泰明:そんなはるかが、係長だもんな

由美:信じられないわよね

はるか:お父さんはさ、いつまでも私が5歳だと思ってるでしょ

泰明:ええ?そんなことないよ

はるか:いっとくけど私、会社ではすごいからね

はるか:もうバリバリのキャリアウーマン

由美:あはは

はるか:なっ・・・なんで笑うの!

由美:いやーごめんごめん、やっぱおかしいわ

はるか:もー!

由美:ごめんって

0:間

由美:でもさ、はるか

はるか:うん?

由美:親っていうのはね、そういうもんなのよ

はるか:そういうもんって?

由美:親にとって、子供はいつまでも子供なの

由美:どんな職業について、どんな仕事をしてたって、子供は子供

はるか:そんなもんかなぁ

泰明:まあ、そんなもんかもしれないな

はるか:ふーん・・・

泰明:でもほんと、偉いよ

はるか:ん?

泰明:頑張ってて、お父さん誇らしい

はるか:なに急に

泰明:いい仕事ついて、そこで頑張って昇進して、ちゃんと生活して

はるか:うん

泰明:結婚して、子供もできて、育児しながら仕事して

はるか:そうだね

泰明:家も買って、車も買って、子供の学費もちゃんと払って

はるか:うん

泰明:自分でしっかり生活して、そして、ちゃんと、親を看取って

はるか:うん

泰明:立派な葬式開いてくれて、お墓もちゃんと、磨いてくれて

はるか:・・・

泰明:そのあとも、しっかり、幸せに、食べて、歯磨いて、寝て、起きて

泰明:偉かったな

はるか:うん・・・

0:と、玄関からチャイムが鳴る

はるか:あれ、誰か来た

泰明:はるかは本当に泣き虫だったなぁ

はるか:え?

由美:ええ、本当に泣き虫だったわねぇ

はるか:ちょっと、まだ言うのそれ

由美:でも、ここに来た時だけは、泣いてなかったわよね

泰明:ああ、そうだったな

はるか:ここに?

泰明:お前、いっつも泣いてたのに

泰明:その時は泣いてなくてさ

泰明:それどころか、眉間に皺よせて、俺らの事睨んで来てな

由美:不細工だったわね

泰明:ああ、不細工だったな

はるか:ちょっと・・・

泰明:あはは

泰明:でさ、じーっと俺らの事見てひとこと「もう大丈夫」って

由美:ええ・・・

泰明:かわいくてさー、俺、笑っちゃって

泰明:そっかー、もう大丈夫なのかーって

由美:ふふふ

泰明:はるかがもう大丈夫って言ってるんだったら、大丈夫なんだなって

泰明:そう思ってさ「がんばれよ」って、一言だけ

はるか:・・・もしかして、その時、お母さん泣いてた?

由美:な、泣いてないわよ

はるか:そっか・・・

泰明:いや、泣いてたぞ

由美:あなた

泰明:いいじゃないか

泰明:母さんは、ずっと泣いてて、なんか言おうとしてたけど、言葉にならなくてさ

泰明:もしかしたら、お前の泣き虫は、母さんの遺伝かもな

由美:もう・・・

はるか:うん、覚えてる・・・覚えてるよ私

0:再び玄関からチャイムが鳴る

由美:コロッケ、まだ冷蔵庫に入ってるからね

由美:食べたかったら、チンして食べなさいね

はるか:うん

泰明:暇だったら、お父さんのラジコン使っていいからな

はるか:使わないよ(笑)

泰明:そうか?お前好きだったじゃないか

はるか:それは小さいころの話でしょ、私ももう大人ですから

泰明:そうか・・・まぁでも、一応、ここ、置いとくからな

はるか:うん・・・ありがと

0:玄関からチャイムが鳴る

由美:お風呂、沸かしてあるから、入りたかったら入りなね

由美:エアコンのリモコンはここで、テレビのリモコンは・・・

はるか:自分の家だから大丈夫だって

由美:あら、そう

泰明:あはは

はるか:ふふ

0:玄関からチャイムが鳴る

由美:ほら、はるか

はるか:うん

0:玄関からチャイムが鳴る

泰明:出てあげなさい

はるか:・・・うん

0:はるか、扉まで歩いていく

はるか:お母さん、お父さん

はるか:ありがとう

0:扉を開けるはるか

0:と同時に、心電図の音が長く伸びる

医師:0時34分、西村さん、ご臨終です

慎吾:どうも、ありがとうございます

医師:お水、用意しますので、こちらで少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか?

慎吾:ええ、お願いします・・・

医師:はい、娘さんは来れそうですか?

慎吾:わかりませんが・・・

医師:わかりました、では、お待ちください

慎吾:はい

0:部屋を出ていく医者

慎吾:がんばったな、はるか

0:と、病室に入ってくる涼香(りょうか)

涼香:お父さん

慎吾:ああ、涼香

涼香:ごめん、電車鈍行しかなくて、疲れて寝ちゃってさ、そのまま乗り過ごして、折り返してたら時間かかって

慎吾:丁度今、心臓、止まった

涼香:えっ

慎吾:頑張ったけど、だめだった

涼香:え?だって、大丈夫って電話で

慎吾:ああ・・・

涼香:ちょっと倒れただけって、具合悪くて、それだけって、大丈夫って・・・

慎吾:・・・

涼香:なんで・・・わかってたらもっと急いだのに・・・

慎吾:お母さんが、心配させないようにって、倒れただけって、そう言って

涼香:そんな・・・

慎吾:すまん・・・

涼香:・・・夢

慎吾:ん?

涼香:夢見た、電車で

慎吾:夢?

涼香:そう、見た事もない家で、何回かチャイム鳴らしたらお母さんが出て、それで、なんか言ってたけど、あんまりよく覚えてなくて・・・

慎吾:うん

涼香:なんか笑ってて、それで、私ちっちゃいころに戻ったみたいで、懐かしい感じがしたけど、知らない家だから全然懐かしくなくて

慎吾:うん

涼香:それで・・・だから・・・お母さん・・・

0:涼香、やっと母に近づいて、取り付いて涙を流す。

0:慎吾はずっと、はるかの手を握っている

0:深夜の病院、窓の外の蛍光灯には、蛾が群がっている。

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らての台本置き場

はじまめして!らて@放浪作家です! このサイトはシナリオライターのらてが執筆したシナリオを置いておく場所になります。 声劇や劇団のインプロ、演劇部の上演に使っていただいても構いません! 皆様こぞってご上演ください! ※上演前に必ず利用規約をお読みください

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