作品名の後の数字は「男:女:性別不問」の比率になっております。

[4:1:1]となっていたら

・男性4人、女性1人、男女どちらがやってもいい役が1人

という感じです。

あくまで台本選びのガイドなので、これを必ず守らないといけないというものではないのでご了承ください

※上演の際は必ず「利用規約」をお読みください

ペンギンの友達 [0:0:2]

0:幕が開くとそこは少年の自室。

0:ペンギンのいる部屋に少年が帰ってくる。

少年:はぁ・・・

ペンギン:あ、おかえりともくん

少年:ただいま・・・

ペンギン:どうしたの?元気ないね

少年:別に・・・

ペンギン:そう?

ペンギン:あ、ねえねえともくん、爪切りどこいった?

少年:テレビの前

ペンギン:ああ、テレビね、テレビテレビ

0:よちよちテレビ台の方に歩いていくペンギン。ベッドに突っ伏す少年。

ペンギン:もーともくんさ

ペンギン:ペンギン背ちっちゃいんだから、こんなところに置かれたら死角になってみえないって、いつも言ってるじゃない

ペンギン:爪切りは・・・

ペンギン:(テレビ台に上りながら)よっと・・・いつも使うんだから床の見えるところに置いといてくれないと

ペンギン:(テレビ台から降りながら)うんしょ・・・見えなくなっちゃうから、ともくん

少年:うん

ペンギン:ともくん?

少年:うーん

ペンギン:ともくん!!!!!

少年:・・・なに

ペンギン:爪切り、わかんなくなっちゃったから!

少年:ああ、うん、爪切りね

ペンギン:・・・ねえ、どうしたの?

少年:んー?なにがー?

ペンギン:いや、なんか元気ないじゃない

少年:うーん、そうかなあ

ペンギン:そうだよ、いつもと全然違う

少年:うーん、じゃあそうなんじゃないの

ペンギン:・・・ともくん

少年:うん?

ペンギン:なんかあったの?学校で

少年:・・・なんもないよ

ペンギン:うそだ、絶対なんかあったって

少年:なんもないって

ペンギン:うそだうそだ、絶対なんかあったって

少年:だから、なんもないって、しつこいな

0:間

ペンギン:(ベッドに上りながら)よいしょっと・・・

少年:・・・なに

ペンギン:・・・このやろっ!

少年:あははははは!あはははは!

ペンギン:このやろー!

少年:ちょ!やめてって!ちょ、ほんとに!あははは!ギブギブ!

ペンギン:このこのーぅ!

少年:あははははは!ちょ、もうほんと!だめだって!

ペンギン:こちょこちょこちょー!

少年:やめてよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

ペンギン:ぎゃんっ!

0:少年がペンギンを振り払う。ダメージを受けるペンギン。

少年:あ、ごめん・・・

ペンギン:いてて・・・うん、いや、大丈夫、軽傷

少年:ほんと・・・?痛かった?

ペンギン:いやいや、ほんと大丈夫

少年:・・・ごめん

ペンギン:いや、ペンギンも、しつこかったし、ごめんね

少年:ううん、ごめん・・・

0:間。ベッドの上に突っ伏す少年とその横に佇むペンギン。

ペンギン:で?なんかあったの?

少年:・・・うん

ペンギン:学校?

少年:うん・・・

ペンギン:どうしたの、なにがあったのさ

少年:うん、勝(かつ)くんに、その・・・からかわれて・・・

ペンギン:また勝くんか!!!!!

少年:うん・・・

ペンギン:にゃろうあの悪ガキめ・・・

ペンギン:よし分かった、ペンギンが懲らしめてやろう

少年:え?

ペンギン:いいかいともくん、これはともくんには初めて話すことかもしれないんだけど

少年:うん?

ペンギン:ペンギンはね、集団行動をする生き物なんだよ

少年:あ、うん、テレビで見た事あるよ

ペンギン:あ、ほんと?

少年:うん

ペンギン:じゃあ、日本に何匹ペンギンが居るか知ってる?

少年:え、日本に?

ペンギン:うん、日本に

少年:えっと・・・500羽くらい?

ペンギン:違う!

少年:えっと・・・ヒントは?

ペンギン:その5倍!

少年:・・・2500匹?

ペンギン:正解!

ペンギン:・・・なんでわかったの?

少年:え・・・

少年:えっと、勘かな?

ペンギン:すごいね

ペンギン:そう、2500匹くらいいるの、日本に僕の仲間は

少年:うん

ペンギン:これは、世界に居るペンギンの役4分の1になるわけだ

少年:え、世界にペンギンって1万匹しかいないの!?

ペンギン:まあ、ペンギン自体はもっとたくさんいるんだけど、人間の管轄下に入ってるペンギンはそれだけしかいないの

少年:えっと、飼育されてるペンギンってこと?

ペンギン:うーん、まあそういうこと

少年:へえ・・・

ペンギン:あ、それで、本題に戻るんだけど

ペンギン:つまりね?こんなに飼育ペンギンが多い国は日本だけなんだよ

ペンギン:人間の文化を知っていて、人間の言葉を話せて、コミュニケーションが取れるペンギンが一番多いのが

ペンギン:この、日本なんだ

少年:へぇ、知らなかった、そうなんだ

ペンギン:そうそう、それでね、ここからだよともくん

少年:うん?

ペンギン:今、最初にペンギンなんて言った?

少年:えっと、集団行動?

ペンギン:そう!この飼育ペンギンの多い日本で、集団行動を得意とするペンギンが束になって掛かれば、いじめっこの勝くんを社会的に抹殺することなんて、お茶の子さいさいってことなのさ

少年:あ、ああ、なるほど

ペンギン:さあ、どうしようか、とりあえず仲間に電話して勝くんの実家にエロ本発注しようか、5千冊くらい

少年:多いよ!

ペンギン:なあに簡単簡単、だって全ペンギンで協力すれば一人当たり2冊で住むから

少年:全員でやるの!?

ペンギン:まあね、日本語伝わるペンギンじゃないといろいろ面倒だからさ

少年:いや、それにしても5千冊って・・・そもそも注文できないんじゃないの?

ペンギン:ああ、出来る出来る、人間には知られてないけどペンギンって脳波で注文できるから

少年:の、脳波で注文・・・?

ペンギン:そうそう

ペンギン:ペンギンの脳波って特殊で、人間界のあらゆるネットワークにハッキング出来るようになってるの

ペンギン:国家レベルのスーパーコンピュータから、民間の個人ネットワークまで自由自在にさ

少年:えっと・・・そんなことできるならとっくに人類侵略してるんじゃないの?

ペンギン:いやいや、そんなことはしないよ(笑)

少年:なんで・・・?

ペンギン:餌くれるから

少年:・・・え?

ペンギン:人間は、餌くれるから

少年:エサ・・・?

ペンギン:うん、ともくんも僕にチーズフォンデュとか食べさせてくれるじゃん?

少年:あ、ああ、うん、君の誕生日の時ね

ペンギン:そうそう

ペンギン:だからペンギンは、人間に飼われてるの

少年:へえ・・・そうなんだ・・・

ペンギン:うんうん

少年:じゃあさ、僕が君に餌をあげなくなったらどうするの?

ペンギン:え・・・?

少年:いや、だから、僕がチーズフォンデュとか、ガトーショコラとか、クリームシチューとか、いろいろ君に持ってくるじゃない?

ペンギン:いつも助かってるよ

少年:うん、それを、君に持ってこなくなったら?

ペンギン:うーん・・・

少年:君は僕の家からいなくなる・・・?

ペンギン:・・・

少年:どう?

ペンギン:で、でも、ともくん

少年:うん

ペンギン:僕だって、君の力になってるじゃあないか

少年:力に?

ペンギン:君が夏休みの宿題終わらないって言ってた時に、代わりにドリルやってやったろう?

少年:字が汚くて逆に怒られたけどね

ペンギン:うぐ・・・そ、それに!

ペンギン:君が筋トレをする時、足を抑えてあげてただろう!?

少年:君が軽くて、体を起こす時に持ち上がっちゃって練習にならなかったけどね

ペンギン:うぐ・・・

ペンギン:で、でも今回!

ペンギン:今回はほら!勝くんを!全ペンギンの総力を挙げて!社会的に立ち直れなくさせてあげるからさ!

少年:・・・

ペンギン:だから頼むよ・・・

少年:・・・

ペンギン:チーズフォンデュ、また食べさせてよ・・・

0:間

少年:・・・(だめ)なんだ

ペンギン:え?

少年:だめなんだ・・・それじゃあ

ペンギン:えっと、だめなのかい?

少年:うん・・・

ペンギン:どうして

少年:勝くんにね、君の事話したんだ

ペンギン:へ?なんで

少年:最近ね、君のおかげで学力も上がったし、君のおかげでスポーツも出来るようになった

少年:君のおかげで女の子にも話しかけてもらえるようになったし

少年:君のおかげで友達も増えた

ペンギン:ふふん、それほどでもないよ

少年:だけど・・・

ペンギン:ん?

少年:問い詰められたんだ、勝くんに

ペンギン:問い詰められた・・・?

少年:うん・・・ダメ友幸(ともゆき)が、最近調子に乗ってるって

ペンギン:くっ、勝くんめ・・・どこまでも悪人だな・・・

ペンギン:彼の両親官僚かい?

少年:それでね

少年:僕話しちゃったんだ、君の事

ペンギン:ああ、うん・・・

少年:そしたらね

少年:「小6なのに」って言われたんだ

ペンギン:しょうろくなのに?

少年:うん

少年:小6なのに、まだそんなこと言ってんのかって

少年:僕の感謝が、全部否定された気がしたんだ

ペンギン:・・・

少年:小6なのに、まだペンギンと喋れると思ってる

少年:小6なのに、まだペンギンのせいにして逃げてる

少年:小6なのに、小6なのに

少年:僕は、そりゃもちろんペンギンの力も借りたけどさ

少年:僕なりに努力して、いろいろ頑張ったのに・・・(泣いてしまう)

ペンギン:ともくん・・・

少年:(泣きながら)だからね、ペンギン

少年:僕、君を動物園に返そうと思ってる

少年:泉動物公園(いずみどうぶつこうえん)

少年:君と僕が出会った、あの公園に

0:間

ペンギン:そっか・・・

ペンギン:うん、そっかそっか

ペンギン:もうちょっと頑張れるとおもったんだけどね・・・

少年:ペンギン?

ペンギン:いや

ペンギン:いずれはね、こういう時が来ると思ってたんだ

少年:・・・どういうこと?

ペンギン:人間とペンギン

ペンギン:君がまだ子供だったから友達でいれたけどね

ペンギン:でもね、まあ、来年から君も中学生だもんね

ペンギン:あはは・・・

ペンギン:わかった

少年:なにがわかったの

ペンギン:僕、帰るよ、動物公園に

少年:え、本当?

ペンギン:うん、帰る

少年:う、うん、わかった

ペンギン:でも、その前に・・・

少年:うん?

ペンギン:君の記憶を、消さなきゃ

少年:えっ?

ペンギン:君はさ、ペンギンについて知り過ぎた

ペンギン:ペンギンが喋れるってこと

ペンギン:ペンギンがスイカ割り出来るってこと

ペンギン:ペンギンがお酒弱いってこと

ペンギン:ペンギンが理数系なこと

ペンギン:ペンギン世界共通の法律についても話しちゃった

少年:3つの規則?

ペンギン:そう

ペンギン:ひとつ、ペンギンは人間に危害を加えてはならない

ペンギン:ひとつ、ペンギンは人間の命令に背いてはならない

ペンギン:ひとつ、前項に反しない限りでペンギンは自己の命を極力守らなければならない

ペンギン:そして最後に

ペンギン:これらの原則を、人間に一切知られてはならない

少年:え、規則は3つじゃなかったの・・・?

ペンギン:だから

少年:・・・

ペンギン:これから、君の記憶を消すよ

少年:記憶を・・・消す・・・

ペンギン:うん

ペンギン:君が、ペンギンと過ごしてきたあらゆる記憶を、消す

少年:そ、そうなるの・・・?

ペンギン:しかたない、お別れするなら、君がいろいろ知ってるのはマズいから

少年:そっか・・・

ペンギン:うん

少年:・・・

ペンギン:じゃあ、ともくん

ペンギン:僕の目を見て

少年:(ペンギンの瞳を見つめる)

ペンギン:よし

ペンギン:これも君に話していなかったことなんだけど

ペンギン:まあ、最後だし、話しておくね

ペンギン:ペンギンの目にはうすーい透明なまぶたがあるんだ

少年:うん、本で読んだことあるよ・・・

ペンギン:そう

ペンギン:そのまぶたはね、人間は「目に海水がしみないように進化した」って思ってるけど

ペンギン:実際は、フィルターなんだ

少年:フィルター?

ペンギン:うん、脳波を、人間の意識に届けるためのレンズみたいな感じなんだ

少年:へえ・・・しらなかった・・・

ペンギン:だから、君は僕の目を見ている限り、君の記憶は僕の思う通りになる

少年:なんだか・・・こわいね・・・

ペンギン:安心してよ、変なことはしないから

少年:うん・・・

ペンギン:それと、君に僕が教えた人間界の知識については、残しておくね

少年:人間界の知識?

ペンギン:うん、君に教えたさんすうや、国語や、社会の知識、なくなったら困るだろ

少年:・・・困る

ペンギン:だから、それは、残しておく

ペンギン:・・・よし、それじゃあ、消すね

少年:・・・

ペンギン:ちょっと眠くなるかもしれないけど、体に害はないようにしておくから

少年:・・・うん

ペンギン:なるべく、瞬きはしないでね

ペンギン:それじゃあ・・・

少年:ねえペンギン

ペンギン:うん?

少年:楽しかったね、いろいろ

ペンギン:・・・うん

少年:北極、寒かったね

ペンギン:うん

少年:スイカ割り、ペンギンが頭痛くなっちゃって、たいへんだったね

ペンギン:うん

少年:あと夜、冷蔵庫からお酒取ってきて、ペンギンだけ飲んだんだよね

ペンギン:うん

少年:あの時、ペンギン死んだかと思った

ペンギン:・・・うん

少年:あとさ、学校来た時も死にそうになってたよね

ペンギン:・・・

少年:ペンギン勝手について来たくせに「バレるから!」とか言ってロッカーにずっと閉じこもってて

少年:いや、ペンギンが来たいって言ったのに、そんな怒らないでよって、逆に僕が怒ってさ

ペンギン:ともくん

少年:先生が掃除の時、ロッカー開けそうになって、僕焦ってさ

ペンギン:ともくん

少年:それで、ペンギンが内側から扉ガタンってやってさ

少年:それで先生腰抜かしちゃって、先生いない間に急いでランドセルにペンギン隠して

ペンギン:・・・

少年:楽しかったね

ペンギン:うん

ペンギン:楽しかった

少年:ありがとね

ペンギン:うん、こちらこそ!ありがとうね!

少年:うん!

ペンギン:それじゃあ・・・消すよ、君の記憶

少年:うん、さよなら

ペンギン:・・・さよなら

ペンギン:ありがとう

0:ぶおおおおんという電子音と共に少年の記憶がかき消されていく。

0:間。

0:少年の自室。少年がベッドで寝ている。

0:ベッドの下、部屋の床にはなぜか一匹のヒゲペンギンが歩き回っている。

少年:(目を覚ます)う、うううん

少年:あれ・・・疲れて寝ちゃってたか・・・

少年:ふあぁぁあ

少年:・・・なんか

少年:なんか、夢見た気がする・・・

ペンギン:(ペンギンの鳴き声で)ンモォオオオオオオオオ!

少年:わああ!びっくりした・・・

ペンギン:ぺたぺたぺた

少年:ん・・・

少年:え?

少年:ええええええええええええええええええええええ!?

少年:ちょ、なんで部屋にペンギンが・・・!

少年:えっと、えっと・・・

ペンギン:ンモォオオオオオオオオ!

少年:うわうるさっ!

少年:ペンギンってこんな鳴き声だったんだ・・・

ペンギン:ぺたぺたぺた

少年:・・・なあペンギン

少年:お前どうしてこんなところいるんだ?

少年:お前さ、寒いところの生き物だろ?

少年:どっから来たんだ?

ペンギン:・・・

少年:って、なにしてんだろ僕

少年:おかあさーん!おかあさーん!

少年:僕の部屋にペンギンが――――

ペンギン:泉動物公園だって

少年:え?

ペンギン:グェ

少年:今、喋った?

ペンギン:ンモォオオオオオオオオ!

少年:ちょ、うるさいって!怖いって!

ペンギン:ペタペタ

少年:ちょ、もうほんと、わけわかんないから、おかあさーん!

0:部屋を出ていく少年。

0:少年の出ていった部屋の中、ベッドに腰掛けるペンギン。

0:いつになくふてぶてしい様子で、足を組んで座っている。

0:物語が終わる寸前、ペンギンはすこーし笑った気もするが、

0:人間の我々には、ペンギンの表情を判断することは、まずできないだろう。

© 2024 らて@放浪作家

らての台本置き場

はじまめして!らて@放浪作家です! このサイトはシナリオライターのらてが執筆したシナリオを置いておく場所になります。 声劇や劇団のインプロ、演劇部の上演に使っていただいても構いません! 皆様こぞってご上演ください! ※上演前に必ず利用規約をお読みください

0コメント

  • 1000 / 1000