教官と生徒の自動車教習 [0:0:2]
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0:教官の乗ってる車に生徒が乗ってくる。
生徒:こんにちは
教官:はい、こんにちは
教官:私、路上教習担当する越田(こしだ)って言います、えっとー
教官:秋月(あきつき)さん
生徒:はい、秋月です、よろしくお願いします
教官:はいよろしく、秋月さん卒業まで時間ないから、びしびし行きますからね
生徒:はい、お願いします
教官:えっと、仮免まで・・・4か月?かかったみたいだけど、なんでこんなかかっちゃったの
生徒:いや、なんか、車乗ると緊張しちゃって
教官:あー
生徒:それでS字とかクランクとか、どうしても棒にあたっちゃって
教官:当たらないようになったんだよね?
生徒:はい・・・すごい時間かかっちゃったんですけど
教官:まあ、その辺は個人差あるから、ちゃんと免許取れれば大丈夫だからね
生徒:はい、よろしくお願いします。
教官:はい、じゃあ早速、準備してもらおうかな
生徒:わかりました・・・
教官:私最初、何もせずに見てるから、とりあえず発進して、外周一周してここ戻って来て
生徒:は、はい、じゃあ、いきます。
教官:はい
生徒:えっと、まずシートベルトして、シートベルト、よし。
生徒:で、バックミラーを調整して・・・えっとあと、えっと・・・
生徒:なんでしたっけ?
教官:・・・
生徒:あ、えっと・・・そうだ座席だ、高さ調整して、リクライニングを、調整して・・・
生徒:・・・少し高いな
生徒:よし、これでおっけー
生徒:えっと、あとはえっと・・・あれ?
生徒:バックミラーって調整したっけ?
生徒:あ、したか、大丈夫か
生徒:そしたらーえっと、あ、そうだ、前後確認だ!
生徒:後ろよし!!!!
生徒:前よし!!!!
教官:・・・
生徒:横よし!!!
生徒:メインファシリティーチェック完了!!!
生徒:システムオールグリーン!冷却装置、予備電源、よし!
生徒:サブシステムチェック完了!!
生徒:サイドブレーキ、解除!
生徒:エンジン駆動!
生徒:ウィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!
生徒:はっ、今日も上等な駆動音じゃねーか
生徒:発進準備おっけー!マキナさん、いつでも行けますよぉ!
教官:・・・?
生徒:マキナさんビビってるんですかぁ?発進許可を頼みます!
教官:・・・
生徒:早く!早くしないと町がアノマリーにバラバラにされてしまいます!
生徒:マキナさん!発進許可を!
教官:・・・
生徒:発進許可を!!
教官:・・・
生徒:許可を!!
教官:・・・
0:間
生徒:ありがとうございます!しっかりオペレーション頼みますよぉ!
生徒:ポンプシステムアクティブ!発進しまぁああす!
生徒:いっけえええええええええええええ!
0:タイヤがキュルキュルと音を立てて発進しようとするが、教官のブレーキで車両が止まる。
教官:ストップ
生徒:なんですか!早くしないと町が!市民が!
教官:あの、秋月さん
生徒:秋月です!マキナ所長!早く出動を!
教官:秋月さん?
生徒:早くしないと犠牲が出てしまいます!早く!
教官:ええと・・・
生徒:マキナ所長!
教官:越田です。
生徒:パイルダー!オン!!!
教官:秋月さん!
生徒:(我に返って)はい!
生徒:・・・。
教官:あの、秋月さん、大丈夫ですか?
生徒:はい・・・
教官:えっと・・・じゃあまず・・・
教官:発進の手順から・・・
生徒:はい・・・
教官:シートベルト、バックミラーのチェック、ここはよかったです・・・
教官:で、座席の調整、ここなんですけど
生徒:はい
教官:リクライニングの角度、ちょっと緩いかなって・・・
生徒:え・・・緩いですか
教官:うん、そうですね・・・
教官:緩いっていうかその・・・前見えてます?それ
生徒:まあ、起き上がれば、こんな感じで
教官:ああ、はい、起き上がればね
生徒:そうですね
教官:あの、最低限、前が見える角度でお願いしたいんですけど
教官:・・・寝てますよね?
生徒:え、寝てないですよ
教官:あ、ううん、そういう寝てるじゃなくて、角度が
生徒:ああ、角度が
教官:そうそう、もうそれ、ほぼ寝る角度ですよね?
生徒:寝る角度か寝る角度じゃないかと言われれば、寝る角度ですね
教官:ですよね
生徒:はい
教官:ですからその・・・最低限ハンドルは握りましょう
生徒:はい
教官:はい。
教官:で、次、前後確認ね
生徒:ここはちゃんと思い出せました
教官:横要らないですよ
生徒:え?
教官:いや、横、確認しなくていいですから
生徒:え、でも横も見ないと、なんか来るかもしれませんし
教官:・・・なんかって?
生徒:イノシシとか?
教官:・・・イノシシ来たらどうするんですか?
生徒:受け止めます、こう、ガッと
教官:車関係ないじゃないですか
生徒:あ、そうか
教官:多分人生で、イノシシが来ることほぼないんで、横は確認しないでください
生徒:もし来たらどうすればいいですか?
教官:あきらめてください。
生徒:はい・・・
教官:あの、さっきからそれ、なにしてるんですか
生徒:メモです、言われたこと、私すぐ忘れちゃうんで、メモっておこうかなと
教官:ほう、偉いですね
生徒:ああ、いえいえ、ほんと、忘れちゃう自分が情けないです(苦笑)
教官:ちなみに、今なんて書いたんですか?
生徒:え?
教官:今の、イノシシがどうこうってところ、なんてメモしたんですか
生徒:(メモを読んで)イノシシは、あきらめる
教官:マタギの日誌みたいになってますよ
生徒:え?
教官:え?マタギの日誌みたいになってるじゃないですか
生徒:・・・なってないですよ
教官:・・・なってないですか?
生徒:ええ、なってないです
教官:じゃあ秋月さん、後日忘れたころに、自分のメモに「イノシシはあきらめる」って書いてあったらどう思います?
生徒:イノシシは、突進してきたら危ないので、無理をして撃ち殺すのは危険だから、深追いは、しない
教官:マタギじゃないですか
生徒:あ、ほんとだ。
教官:マタギの日誌みたいにメモ取らないでください。
生徒:なんて書けばいいんですか・・・?
教官:発進時の、安全確認は、後ろと、前だけで大丈夫
生徒:(ぶつぶついいながらメモる)
教官:書けましたか?
生徒:はい
教官:よし
生徒:それじゃあ、とりあえずエンジンはかかってるので、このまま発進する感じでいいですか
教官:待ってください
生徒:はい?
教官:マキナさんって誰ですか?
生徒:えっ
教官:安全確認したあと、秋月さんパイルダーオンしてましたよね
生徒:あちゃあ・・・またか・・・
教官:なんですか「またか」って
生徒:すみません、また私パイルダーオンしちゃってましたか・・・
教官:うん、してました。パイルダーオン。
生徒:記憶ないんですよね、毎回その部分
教官:え、記憶ないんですか
生徒:はい・・・緊張してテンションが上がると、ある一点から意識が飛びまして
生徒:気づくと、周りの人から「パイルダーオンしてたよ」って・・・
教官:不便ですね・・・
生徒:バイトの面接でも、挨拶して、自分の長所喋ってる時に、変に意識して緊張してきて
教官:はい
生徒:どうやら私、店長のこと抱きしめてパイルダーオンしちゃったみたいで
教官:あらら
生徒:あれだけパイル―ダーオンしないようにって意識してたのに、私パイルダーオンしちゃって
生徒:あれからしばらく経って、大人になってからはあんまりパイルダーオンしてなかったんですけど
生徒:まさかこんなところでパイルダーオンしちゃうなんて・・・私もうほんと、パイルダーオンで・・・
教官:大変でしたね
教官:しかし、途中で意識が飛ぶのはまずいですね。運転中にパイルダーオンしてしまったら運転どころじゃないでしょう
生徒:そうですね・・・意識がないのでわかりませんが・・・
教官:これ、ちゃんと入学する時申告してますか?
生徒:はい・・・一応
教官:なんて書きました?
生徒:パイルダーオンしやすいです と
教官:あれあんただったのか
生徒:あの・・・やっぱりマズいですかね・・・
教官:そうですね、こちらとしても運転中に意識がなくなる方を卒業させるわけには・・・
教官:それにね秋月さん。
教官:もし免許が奇跡的にとれたとしても、そのあとのあなたの人生が不安です
生徒:そうですよねえ・・・
0:間
教官:でも、必要なんですよね、免許
生徒:え・・・?
教官:いえ、あなたぐらいの年の方がね、入学されるときって、大体何かしらの事情があるんです
教官:お仕事の事情で免許を取りに来る方もいれば、中には元奥様との復縁のために免許を取りに来る方もいらっしゃる
教官:あなたにも、おそらくそういった抜き差しならない事情があるんでしょう。
生徒:越田さん・・・
教官:まあ、詳しくは聞きませんがね
教官:ここで一緒になったのも何かの縁だ。なんとか一緒に頑張ってみましょう。
生徒:越田さん!!ありがとうございます!!
教官:いえいえ
教官:とはいえ、タダで見逃すわけには行きません。
教官:こちらもちゃんと教官として、合格点が出るまでは点数あげられませんからね
生徒:はい!私頑張ります!
教官:よし!じゃあ基本からおさらいしましょうね
生徒:お願いします!
教官:はいじゃあまずリラックスして、深呼吸
生徒:すぅー はぁー
教官:イライラしてたりすると、それが運転に出て、事故になるケースもあります
生徒:すぅー はぁー
教官:なので、精神衛生もしっかりと管理して、車は心に余裕のある状態で乗りましょうね
生徒:すぅー はぁー
教官:特に秋月さん、もし緊張して発作が出るのであれば、リラックスして教習に臨みましょう
生徒:すぅー
教官:私のことは一旦教官ではなく、仲のいい友達とか、親戚の人、くらいに思って緊張をほぐしてください
生徒:はぁー
0:間
生徒:はい、大丈夫です
教官:はい、そしたら発進前の基本動作ね
生徒:はい
教官:まずシートベルト、確認してください
生徒:・・・はい、ちゃんと締まってます
教官:はいOK。
教官:そしたら次、座席の高さと位置、バックミラーの確認ね
生徒:・・・はい、後ろちゃんと見えます
教官:うん、ハンドルも握れてるね、OK
教官:じゃあ、エンジンかけて、安全確認ね
教官:大丈夫?車とか人とかいないかな?
生徒:はい、大丈夫です、いないです
教官:OK
教官:そしたら、ウィンカー出して、まずゆっくり発進していこう
生徒:は、はい・・・
教官:はい緊張しなーい、ゆっくりでいいからねー
生徒:大丈夫です、大丈夫
教官:いいね
教官:うん、速度も安定してるね
教官:そしたらそのまま外周一周回ってみようかあ
生徒:はい・・・
教官:まっすぐねー、まっすぐまっすぐ
生徒:あ、あの
教官:ん?どうしたの?
生徒:カーブが
教官:うん、左だね、ゆっくりでいいからね
生徒:あの、越田さん
教官:どうしたの
生徒:あの、カーブが、カーブが
教官:カーブ?
生徒:あの、はい、カーブが、カーブが近づいて来てます
教官:ん?秋月さん?
生徒:あああ、カーブが!カーブが!カーブが接近中!
教官:秋月さん!
生徒:前方、12時の方向よりカーブが接近中!マキナさん!指示お願いしまぁす!
教官:落ち着いて秋月さん!深呼吸!はいすぅー!はぁー!
生徒:なぁにいってんのマキナさん、私は落ち着いてますよっ
教官:だめだ・・・
生徒:マキナさん!指示を!カーブが接近中!
教官:ちょ、秋月さん!アクセル踏み込まないで!
生徒:カーブ急接近!マキナさん!ぶつかる!マキナさん!
教官:ハンドル切って!ハンドル!
生徒:マキナさん!ハンドルの方向は!
教官:左!左だよ!ぶつかる!ぶつかるって!
生徒:左ね、まーかせといてー!おりゃあああああああああああああああああ!
教官:うおわああああああああああああああああああああ!
生徒:マキナさん、指示が遅いんじゃない?ま、私のウルトラテクがあればこんなの余裕だけどね!
教官:いや秋月さん!いいから減速!減速して!そこ!そこ止めて!
生徒:マキナさん!無線で「そこ」じゃあわかんないって!座標情報指示ください!
教官:ざ、座標?ちょ、ぶつかる!ぶつかるから!ハンドル左!
生徒:おっけー左ね!ちゃんと捕まっててよぉー!
教官:ちょ、そこS字カーブ!秋月さん!出口にまだ車いるから!秋月さあああああああああああん!
0:間。車、一時停止する。
教官:・・・?
生徒:あっはは、マキナさんたら情けないんだから。
教官:え・・・
生徒:変な声だしちゃって、もしかしてビビってるの?
教官:なんだ今の・・・
生徒:マキナさぁーん、今回の任務、ちょっとイージーすぎない?
教官:あの、秋月さん
生徒:なんでマキナさんが敬語なのよ、私の上司でしょ?しっかりしてよねぇ!
教官:えっと・・・
教官:おい、秋月
生徒:はいはーい、こちら秋月、いつでも指示ください!
教官:・・・今回の任務は・・・この教習所のトラックを一周すること
生徒:それさっきやったじゃない!マキナさん私の事試してるの!?
教官:・・・いや、それだけじゃないんだ
生徒:え、どういうこと・・・?
教官:秋月君、キミには特殊な追加任務を与える
生徒:追加任務・・・?
教官:そうだ。君には都市部に現れたS字カーブ、クランク、そして縦列駐車をせん滅してほしいんだ。
生徒:じゅ・・・縦列駐車ぁ!?
教官:そうだ、都市部に奴らが現れて暴れているという報告を受けた。
教官:すでに奴らの出現から5時間は経過している。
教官:はっきりとは状況はわからないが、建物、そして市民共に被害は甚大だろう
生徒:で、でもマキナさん、縦列駐車って、あんな化け物、私に倒せっていうの・・・!
教官:君は市民の希望なんだ。この任務は、君にしかできない。
生徒:・・・デスク、勝算は。
教官:・・・?
生徒:デスク!勝算は!今すぐ計算して!
教官:(声を変えて)・・・勝算は、極めて低いのです!がんばってねー!秋月ちー!
生徒:そう・・・
教官:(マキナさんに戻って)すまない・・・たのむ秋月君、キミにしかできないんだ・・・
教官:わかってくれ・・・!
生徒:(徐々に笑って)ふふ・・・はは・・・あはははは!
教官:秋月君?
生徒:いいわ、やってやろうじゃない。
教官:秋月君
生徒:これで私も、人類の救世主ってわけね!
生徒:感謝しなさい人類諸君!いいわ・・・いいわやってやるわよ!
生徒:私が地球を救ったらぁ!
教官:頼むぞ、秋月君!超電導ロボ、秋月発進準備!
生徒:第五世代
教官:ん?
生徒:第五世代超電導ロボ
教官:あ、はい
教官:・・・第五世代超電導ロボ秋月!発進準備!
生徒:後ろよし!!!!
生徒:前よし!!!!
生徒:メインファシリティーチェック完了!!!
生徒:システムオールグリーン!冷却装置、予備電源、よし!
生徒:サブシステムチェック完了!!
生徒:サイドブレーキ、解除!
生徒:エンジン駆動!
教官:発進!
生徒:ウィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!
教官:まずは外周一周だ!
生徒:ウィイイイイイイン!
教官:ちょ、秋月さん!速い速いって!
生徒:キュイーーーン!
教官:す、すごい!完璧なドリフトだ!
生徒:よっしゃあ!ちゃっちゃと終わらせてシャワー浴びるぞぉお!
教官:おお!あっという間に外周一周!
教官:次!追加ミッションだ!S字カーブ!
生徒:まかせて!こんなもん、ここをこうして!
教官:な、なんだと!?ほぼ直線でカーブを抜けやがった!次!クランク!
生徒:クランクねー!余裕余裕!
教官:なんだこの走行は・・・
教官:まさか・・・この車が校内唯一のFF車(えふえふしゃ)ということを知っている!?
教官:後輪駆動のスリップを生かしてかくばったコーナリングを実現させたというのか!!
生徒:敵補足!クランク!最後の一体、追撃するよぉおおおお!
教官:くっ!
教官:この走り・・・プロペラシャフトの仕事率まで完璧に計算されているっ!
教官:こいつ!一体何者なんだ!?
生徒:マキナさん!最後!
教官:あ、ああ!最後は縦列駐車だ!
生徒:よし!縦列駐車!前方に捕捉しました!行きますよ!
教官:ああ、頼んだ秋月君!
生徒:いっけええええええええ!
教官:うおおおおおおおおおおおおおおああああ
0:間。二人、ぜえぜえ言っている。
生徒:はぁ・・・はぁ・・・
生徒:マキナさん・・・聞こえてますか
教官:ああ、聞こえているよ・・・
生徒:私、やれましたか・・・
教官:ああ、君の活躍はすばらしかった、完璧な走りだったよ
生徒:よかった・・・
教官:頑張ったな、ほんとうによくやってくれた・・・
0:間。二人、息を整える。
生徒:あー・・・シャワー浴びたい・・・
教官:時刻ヒトゴーマルマル。敵機せん滅、操縦士秋月、帰艦せよ
生徒:はぁ・・・マキナさんつーかーれーたー
教官:ははは、シャワールームにガスを送っておいた、存分にくつろいでくれ
生徒:・・・了解
0:間。秋月、一度気絶して我に返る。
生徒:・・・?
教官:あ、気づきましたか、秋月さん
生徒:え、ああ、はい・・・
教官:お疲れ様です。
生徒:え、あれ
教官:・・・
生徒:は、え、あれ、あ!ああ!
生徒:私・・・またやっちゃいましたか!
教官:・・・ええ
生徒:はぁー・・・だめだ・・・やっぱりだめだったか・・・
教官:秋月さん
生徒:終わりだ・・・もう諦めるしかないのか・・・免許・・・
教官:秋月さん!
生徒:・・・なんですか
教官:あなたの運転は素晴らしかった。
生徒:え?
教官:実に巧妙な運転技術だった。
教官:一ミリの隙も無い正確なハンドルさばき、物理学を超越したコーナリング
教官:ひとつひとつの動作に神が宿っているようだった
生徒:え・・・どういうことですか
教官:あなたはプロになれる。
教官:いいや、もはやあなたの運転技術はプロを越えているかもしれない
生徒:そ、そんなすごかったんですか・・・?
教官:ああ、いい経験をさせてもらった!
生徒:・・・越田さん!ということは私!私ちゃんと運転出来てたってことですか!
教官:それどころじゃない!あなたの技術は世界を狙えるレベルだった!
生徒:実は、私は「運転がうまい」ってことですか!
教官:ああ!私が保証しよう!
生徒:越田さん!私・・・私うれしいです!
教官:私もうれしいよ。こんな世紀のドライバーの助手席に乗ることができて!
生徒:よかった・・・よかった・・・
生徒:ということは・・・私・・・
教官:ああ
生徒:私は!
教官:ああ!
生徒:合格ということですか!
教官:いえ、不合格です
生徒:え?
教官:不合格です
生徒:え、なんでですか
教官:確かにあなたの運転はドチャベチャにうまかったけど、ここは教習所です
教官:スピード出しすぎ、ドリフトし過ぎ、見てくださいあのタイヤ痕
生徒:あ、ああ、ほんとだ
教官:とりあえずあれ、弁償してもらいますから
生徒:ええー!
教官:あと、今回の授業0点ね
生徒:そんなぁ!あんなにほめてくれたのに!
教官:それとこれとは別の話です。
生徒:お願いしますよぉ!免許ほしいんですってえ!
教官:だったら発作を起こさず運転できるようになってください。
生徒:そ、それはぁ・・・
教官:はい、じゃあリラックスするところから始めますねー
生徒:また最初からやるんですかぁ!
教官:はい文句言わない!吸って―
生徒:すぅー
教官:吐いてー
生徒:はぁー
教官:はい吸って―
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:以下エピローグ、読んでも読まなくてもOKです!
生徒:数年後。私は人生で初めての海外に来ていた。
生徒:険しい山々が育んだラテンの地、チリ共和国。
生徒:手つかずの大地に澄んだ空気が充満している。
0:間。
生徒:騒がしいエンジンの音。
生徒:山あいの綺麗な空気をかすませる排気ガスと砂煙(すなけむり)。
生徒:そして、ヘルメットの内側、耳に詰め込まれた無線機から聞こえる聞きなじみのある声。
生徒:それらすべてが私の体にしみこんで、脳内で分泌される大量のアドレナリンを、奥歯でかみしめる。
0:やかましいエンジン音。会場に立ち込める緊迫感。
教官:よし、フラッグ10分前だな、頼むぞ秋月
生徒:はあ、マキナさん、私緊張してるみたいです。
教官:秋月君はいつも緊張しているじゃないか
生徒:あはは、言われてみりゃ、そうでしたね
生徒:マキナさん
教官:ん?
生徒:やっとここまで来ましたね
教官:ああ・・・
生徒:私たちが出会った教習所、覚えてますか
教官:忘れるわけないだろう
生徒:最初はあんなしみったれた教習所だったのに
生徒:今じゃ世界の地面を、私たち走るんですね
教官:悪かったな、しみったれてて
生徒:はは・・・
0:間
生徒:すぅーはぁ・・・マキナさん、指示を。
教官:ああ、秋月君
教官:今回も、君にしかできない特別任務になる
生徒:はい。
教官:ターゲットは、WRC(ダブリューアールシー)。
生徒:ダブリューアールシー?新種ですか?
教官:ああ、我々の対処記録(たいしょきろく)にはないな
生徒:和名は・・・?
教官:世界ラリー選手権。
教官:国際自動車連盟が主催するラリーの世界選手権だ。
生徒:はい・・・。
教官:敵はターマック、ブッシュ、砂地、砂利道、様々な攻撃をしかけてくる
生徒:その時は、マキナさんが、バシッと対処の支持をしてくれるんでしょ?
教官:あたりまえだ
生徒:・・・頼りにしてますよ
教官:・・・ああ。
0:間
教官:コドライバーオーライ、フラッグ1分前だ
生徒:マキナさん、よろしくおねがいしますねぇ!
教官:私を信じてくれ。
教官:よし、秋月君!まずは安全確認!
生徒:後ろ!前!横!
教官:イノシシは!
生徒:いません!
教官:よし!
生徒:いきますよぉー!
教官:30秒前!
生徒:メインファシリティーチェック完了!!!
生徒:システムオールグリーン!冷却装置、予備電源、よし!
生徒:サブシステムチェック完了!!
生徒:サイドブレーキ、解除!
生徒:エンジン駆動!
教官:いくぞ秋月君!
生徒:はい!発進します!マキナ教官!
教官:さぁ!いつも通り!5秒前!4!3!2!1!
0:一瞬、世界がスローモーションになる。
0:世界がもとに戻る。直後、世界一気合の入った掛け声が響き渡る。
生徒:パイルダァァァァァ!
生徒:オン!!!
0:START YOUR ENGINE
0:エンジンヤロウ(もちろん紳士・淑女)たちのダーティーバトルが今ここに始まる!
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:終
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