作品名の後の数字は「男:女:性別不問」の比率になっております。

[4:1:1]となっていたら

・男性4人、女性1人、男女どちらがやってもいい役が1人

という感じです。

あくまで台本選びのガイドなので、これを必ず守らないといけないというものではないのでご了承ください

※上演の際は必ず「利用規約」をお読みください

店長とバイトの防衛戦【2:0:1】

0:とあるファミレスの事務所。厚ぼったいメガネをかけた男がパイプ椅子に座って雑誌を読んでいる。

0:と、そこにバイトが入ってくる。

バイト:お疲れ様でーす

店長:おう、お疲れい

バイト:あ、店長、お疲れ様です

店長:うん

0:間。店長は雑誌を読む。バイトはロッカーから制服を出して準備を始める。

バイト:あ、そういえば店長、昨日このへんに電池置いてませんでした

店長:んー?電池?

バイト:はい、昨日、家帰ってからない事に気づいたんですけど、ありませんでした?

店長:えー、見てないけど

バイト:そうですか・・・どこで置いてきたんだろーなあ

店長:困るの?

バイト:あ、いえ、まあそんな困らないんですけど

店長:確か、予備のやつあったと思うよ

バイト:え?予備って?

店長:いやあ、店で無くなった時に使おうと思ってたんだけど

0:事務机の引き出しを漁る店長

店長:あ、ここだ、根岸君

バイト:はい

店長:単(たん)なに?

バイト:・・・はい?

店長:いや、電池、単1以外は・・・あるよ

店長:ああ・・・単1買っとかなきゃな・・・

バイト:あの、店長?

店長:ん?

バイト:えっと、その、リチウムです

店長:ん?何が?

バイト:電池

店長:なにリチウムって

バイト:いや、携帯とか充電するやつ

店長:あー!そっちか!

バイト:すみませんなんか

店長:あ、いやいや、そうだよね

店長:よく考えたら乾電池だけバイト先に忘れるってあり得ないよね

バイト:はい・・・

店長:ごめんごめん

バイト:いえ

店長:見つけたら取っておくね

バイト:はい、お願いします

店長:さて、俺もそろそろ準備するか

店長:あれ?根岸君今日何時上がりだっけ

バイト:10時ですね

店長:あー助かる、よろしくね

バイト:はーい

店長:じゃあ俺開店チェックしてくるから、時間までゆっくりしててね

バイト:はい、よろしくお願いしまーす

0:間。バイトは準備を終えてイスに座って携帯をいじっている。

0:と、不意に事務所のドアが開いて何某が入ってくる。

何某:お疲れ様でーす

バイト:あ、お疲れ様です

何某:お疲れ様です

バイト:はい

何某:あれ?店長は?

バイト:今、開店チェックしてます

何某:あ、そう

何某:てか初めましてだよね

バイト:そうですね

何某:私中村、よろしくね

バイト:はい、よろしくお願いします

何某:きみもしかして、佐藤君?

バイト:え?

何某:たぶんそうだよね、若い子少ないからこの店

バイト:えっと・・・

何某:店長から話聞いてるよー!めちゃめちゃ仕事出来るって!

バイト:あの、中村、さん?

何某:ん?

バイト:僕、根岸です

何某:あ、根岸くん

バイト:はい、根岸です

何某:よろしくね、根岸くん

バイト:はぁ・・・よろしくお願いします

何某:じゃ、準備しちゃおうか

バイト:あ、はい

何某:根岸くんは普段キッチンやってるんだよね?

バイト:そうですね

何某:私ホールだからばっちり連携していこうね!

バイト:はい、よろしくお願いします

何某:じゃ、私、看板の電気つけてくるからまたあとでねー

バイト:はーい

0:何某、事務所の扉から出ていく

0:入れ替わるようにして店長が戻ってくる

店長:ハイお疲れー

バイト:あ、店長

店長:お疲れお疲れ

店長:いやー今日熱いねー

店長:多分いそがしくなるよー

バイト:そうですね

店長:頼むね根岸君

バイト:はい、よろしくお願いします

店長:はい宜しくー

バイト:あの、店長

店長:ん?

バイト:新しい人雇ったんですか?

店長:ああ、うん

店長:なんで?

バイト:いや、さっき会って、挨拶したんで

店長:え?会ったの?

バイト:え?

バイト:はい、さっき事務所入ってきて

店長:ああ、そう。

店長:なんだろう、今日シフト入ってなかったと思うんだけど

バイト:え、そうなんですか

バイト:でもさっき来てましたけど、看板の電気つけるって外行きましたよ

店長:ああ、そう

店長:間違えちゃったのかな、栗林さん

バイト:ん?

店長:まぁいいや、丁度忙しくなりそうだし、せっかく来てもらったんだったら働いてもらおうかな

バイト:店長?

店長:ん?

バイト:え、新しい人の名前、なんて言いました?

店長:栗林さん?

バイト:栗林・・・?さっきの人、中村って言ってましたよ自分の事

店長:中村?誰それ

バイト:知りませんよ

店長:えええ!知らない人店に入れたの?

バイト:仕方ないじゃないですか!

バイト:当たり前のような顔して入ってきましたし

バイト:店長が新しく雇った人なのかとおもって・・・

店長:確かに人は雇ったけど、中村なんて人、俺しらないよ!

バイト:どういうことですか・・・

店長:いやあ・・・

バイト:とりあえず、警察呼んだ方がいいんじゃないですか?

店長:ええ!警察!?

バイト:だって、泥棒かもしれませんよ

店長:なんかとられたの?

バイト:いえ、盗まれた感じはなかったですけど

店長:じゃあなんて通報するの・・・

バイト:えっと・・・

バイト:知らない人が、気づかないうちに、紛れ込んでました・・・

店長:バカみたいじゃないか!

バイト:でもそれ以外に言いようないじゃないですか

店長:いたずらだと思われて相手にしてもらえないよ!

バイト:じゃあどうするんですか!

0:と、再び事務所の扉が開き何某が入ってくる。

何某:よーし準備完了

店長:・・・

バイト:・・・

何某:根岸君、表準備できたから、そろそろ入ろっかー

店長:根岸君・・・この人?

バイト:はい、店長、この人です・・・

何某:あ、店長!

何某:お疲れ様ですっ

0:間

バイト:(小声で)店長!

店長:あ、ああ

店長:あの、えっと

何某:ん?どうしたんですか店長

店長:誰ですかあなた

何某:え?

店長:いや、え?じゃなくて

店長:あなた誰ですか

何某:やだな店長、中村ですよ!この店の看板娘じゃないですかぁ!

店長:・・・なんで嘘つくの

店長:雇った覚えもないし、そもそもあなたとは初対面ですよね?

何某:えっ

店長:目的はなんですか・・・

店長:あなた、誰ですか?

0:間

何某:ふふ、ふふふふ

店長:・・・?

何某:ははは!あーっはっはっは!

何某:バレちゃあ仕方がないね

バイト:なんだなんだ・・・?

何某:バサッ

バイト:はっ!その顔は!

何某:気づいたかい坊や

何某:西にお宝見つければ、行って自分のモノにする

何某:東に財宝眠ってりゃ、行って自分のモノにする

何某:雨にも負けず、風にも負けず

何某:天下の大泥棒、アカネたあぁ、あたしの事だよっ!

バイト:店長!やっぱりこいつ泥棒です!

店長:いや、ちょっと待って

バイト:なんですか!今本人の口から泥棒って!

店長:根岸くん!

バイト:はい・・・!

店長:君は流されている。

バイト:なんですか流されてるって

店長:彼女の雰囲気に流されている

何某:なに言ってるんだい店長さんよぉ!もたもたしてるとここの金、すべてあたしがいただくよっ!

バイト:て、店長!

店長:根岸君!

バイト:なんですか!

店長:彼女をよく見るんだ

バイト:は、はい・・・?

0:間

バイト:あれ・・・?

店長:気づいたか

バイト:あの人・・・

店長:そう、彼女は泥棒っぽい雰囲気を出しているだけで、実際にはずっとボックスステップを踏んでいるだけなんだ

バイト:僕、あの人のセリフに騙されて・・・

店長:無理もない・・・確かに彼女のセリフは限りなく泥棒っぽかった・・・

店長:しかし・・・

店長:おいお前!

何某:なんだ!

店長:ここに何をしに来たんだ!

何某:今言っただろう!お宝をかっさらいに来たのさ!

店長:ここにお宝なんて、ない!

何某:ははっ、猿芝居はやめな!

店長:あるとしたらそこの金庫の中に、店の売上金が入ってるくらいだ!

何某:なんだ、ちゃあんとあるじゃないか

店長:ああ、金ならある!

何某:じゃあそれをいただいて、ずらかるとするかねえ!

店長:どうぞ!

何某:・・・

店長:どうぞ!

何某:・・・

店長:なぜ金を盗まないんだ!

何某:そ、それは!

店長:いやあ、待て!当ててやる!

何某:何ぃ!

店長:それは!お前が!泥棒じゃないからだあ!

何某:くっ!

バイト:あ、ボックスステップやめた

店長:はっはっは、参ったか

何某:くそ、なぜバレたんだ・・・

店長:さあ観念しろ、お前の目的はなんなんだ!

何某:ツルです。

店長:は?

何某:バサバサ、バサバサ

バイト:えっ

何某:バサバサバサバサバサバサ

バイト:わあああこっちきた!

何某:クルックー

バイト:こっちくんな!

何某:根岸さん

バイト:え、僕ですか

何某:ええ、根岸さん、あなたです

バイト:・・・はい、なんでしょう

何某:お久しぶりです、根岸さん

バイト:え?僕たち初対面ですよね・・・

何某:はは、無理もありません、今は人間の姿をしていますから

何某:しかし、これを見たらいかがでしょうか

バイト:なんですか・・・

バイト:はっ!これは!足に傷がある!

バイト:まさかあなたは!

何某:そうです、私は先日あなた様に助けていただいた、ツルです。

何某:クルックー

バイト:そ、そうだったのか・・・

何某:あの時の恩返しがしたくて神様に祈っていたら、いつの間にか人間の姿になっておりまして

何某:今日はあなた様に恩返しがしたくてここまで参った次第でございます、クルックー

バイト:恩返しなんて、そんな、私はあなたを助けたつもりなんて・・・

何某:ふふふ、本当にお優しい方・・・バサバサバサバサ

何某:それでも私は救われたのです・・・どうか私の恩返し、お受け取りください・・・クルックー

バイト:そ、そうかい、そこまで言われちゃあ仕方ない・・・

バイト:で、君はどんな恩返しをしてくれるんだい。

何某:今日のあなたのシフト、私が代わりに出て差し上げましょう、バサバサバサ

バイト:なに!ということは、僕は今日は働かなくていいということですか!

何某:ええ、それはもちろんのこと、私が代わりに働いた分のお給料は全額あなたのお口座に振り込ませていただきます

バイト:そ、そんな都合のいい話が

何某:これは恩返しでございます・・・私の命の恩人に少しでも楽して稼いでいただきたいのです!

バイト:わかった、ではその恩返し、謹んで受けようじゃないか

何某:ありがとうございます・・・

バイト:というわけで店長、僕は今日非番みたいなんで、失礼します、お疲れ様でした

店長:おい根岸

バイト:なんですか?

店長:君は本当に流されやすいな

バイト:え?

店長:よく見るんだ

バイト:・・・?

店長:冷静に、彼女を、観察してみろ

0:間

バイト:はっ!!!

店長:そうだ、彼女は人間だ

店長:ただ、鳥っぽい声を出して、両手を羽ばたきながら

店長:・・・ボックスステップを踏んでいるだけだ

何某:クルックー

店長:おいお前!

何某:なんだクルックー

店長:お前ツルじゃないだろ!

何某:なにをいってるんだツル、わたしはツルだツル

バイト:鶴の語尾ってツルなのか・・・

何某:クルックー

店長:わかってるんだよ!お前はツルじゃない!

何某:なぜそんなことがわかるツル!

店長:お前、着物着てないじゃないか!

何某:何っ!

店長:鶴は恩返しに来るときは必ず着物って相場が決まってるんだよ

店長:対してお前の服装、どう見てもニートのそれじゃないか!

何某:な、なんて察しがいいんだ

バイト:さすが店長!

バイト:この詐欺師!二回も騙しやがって!

何某:サギじゃなくてツルだけどね!

バイト:やかましわ!

店長:さぁ・・・答えてもらおうか

店長:お前は一体何者なんだ!

何某:トラです

店長:ん?

何某:トラです

何某:ガオー

バイト:うわあ!虎だぁ!

店長:根岸

バイト:店長!虎です!保健所!保健所に電話!

店長:根岸!

バイト:なんですか!

店長:よく見るんだ

バイト:・・・

何某:あぁ、俺はこんな姿になってしまった・・・

何某:臆病な自尊心と尊大な羞恥心が俺をこうさせた・・・

バイト:人間だ・・・

店長:そうだ、やつは人間だ

バイト:彼は人間だったんだ・・・

店長:根岸?

バイト:詩歌(しか)の道で大成(たいせい)を成そうとしていたが、どうにもうまくいかず、走って、走って気づいたら・・・

バイト:虎になっていたんだ・・・

何某:ぐうう、お前と最後に話せてよかったぁ、俺はそろそろ理性を失って人間を食らうようになる

何某:その前に、その前に逃げるのだ・・・

バイト:辛かったろう・・・さみしかったろう・・・

バイト:僕が、僕がお前の状態に気づいて手を差し伸べてやれれば・・・

バイト:僕が少しでも話を聞いてやれてたら・・・

何某:友よ、どうか気に病まないでおくれ

何某:これはすべて、私が招いたことなのだから

何某:ガオー

バイト:はぁぁ・・・僕は・・・僕ってやつは!

何某:じゃあ、俺は行くよ、なるべく、遠くへ、遠くへと・・・

バイト:・・・どうか、息災で・・・

何某:ありがとう、ありがとう

0:「ありがとう、ありがとう」と言いながら事務所を出ていこうとする虎。止める店長。

店長:ちょっと待て

何某:ガオ?

店長:ガオ?じゃねーよ

何某:なんだガオ。早くしないと野生に戻ってお前らを食べちゃうガオ。

店長:いや、あの

何某:トラトラ

店長:お前トラじゃないだろ

何某:そうトラね、もとは人間だったトラ

店長:いや、今も人間だよ

何某:えっ

店長:あの、そろそろ教えてほしいんだけど

何某:あ、はい

店長:あなたは何者ですか

何某:私ですか

店長:はい

何某:知りたいんですか

店長:そうですね

何某:面接希望者です

店長:不採用です

何某:あ、そうですか

店長:はい

何某:じゃあ、その、帰ります

店長:はい、帰ってください

何某:はい、じゃあ、失礼します

店長:はい

0:トボトボと帰っていく何某。

店長:はぁ・・・やっと帰った

店長:・・・根岸君なんで敬礼してるの

バイト:えっ

バイト:あ、いや・・・

店長:やばいもうこんな時間だ

店長:根岸君キッチン準備してきて!

バイト:あ、はい!

0:バイト、退場

店長:はぁ・・・疲れた。

:完

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