作品名の後の数字は「男:女:性別不問」の比率になっております。

[4:1:1]となっていたら

・男性4人、女性1人、男女どちらがやってもいい役が1人

という感じです。

あくまで台本選びのガイドなので、これを必ず守らないといけないというものではないのでご了承ください

※上演の際は必ず「利用規約」をお読みください

銀行職員の窓口対応 [1:1:0]

0:平日の昼。銀行の窓口。人はまばらである。

来栖:振り込み

職員:え?

来栖:振り込み

職員:あ、ええ、番号札お持ちですか?

来栖:持ってないよ

職員:えっと・・・あちらで、番号札取って、こちらでお呼びしますので

来栖:そうなの

職員:ええ

来栖:(深いため息)

職員:・・・

0:男、番号札を持って戻ってくる

来栖:ん

職員:へ?

来栖:番号札

職員:えっと・・・

来栖:42番

職員:ええ、あのー

来栖:なに

職員:こちらでお呼びしますので

来栖:そうなの

職員:ええ

来栖:時間ないんだけど

職員:いや、でも

来栖:お姉さん番号札あればいいって言ったじゃん

職員:あー、えっと、少々お待ちくださいね

来栖:ん

0:間

職員:お待たせしましたお客様

来栖:来栖(くるす)だけど

職員:はいっ?

来栖:来栖、俺の名前

職員:あ、ああ、来栖様

来栖:うん

職員:ええ、来栖様、えっとご用件は・・・

来栖:振り込みだって

職員:あ、かしこまりました、そしたら、えっと、こちら、番号札になりますので

来栖:ん・・・

職員:はい?

来栖:番号札持ってるけど

職員:え?

来栖:さっきの、ほらこれ、42番

職員:あ、ああ、ええ、はい

来栖:振り込み

職員:はい・・・あいや、ですから、こちらの番号札を

来栖:だから番号札持ってるって

職員:いやですから、そちらの番号札は一次受付の物で、こちらの番号札で、ご用件お伺いしますので

来栖:そうなの

職員:はい・・・

来栖:急いでるんだけど

職員:申し訳ございません

来栖:ダメなの

職員:はぁ・・・

来栖:そう、じゃあ、はい

職員:ええ、60番で、すぐお呼びしますので

来栖:頼むよ

職員:はい、少々お待ちください・・・

職員:えーっと・・・

職員:71番でお待ちの方、1番窓口までどうぞー

来栖:ちょいちょいちょい

職員:はい?

来栖:なんでなの

職員:な、なにがですか?

来栖:いやだから、俺、60番なんだけど

職員:え、えぇ・・・

来栖:なんでなの

職員:いや、それはその・・・

来栖:ちょ、番号1から数えてみ

職員:はい?

来栖:いいから

職員:えっと・・・1、2、3、4・・・

来栖:おそいよ

職員:え?

来栖:おそいよ数えるのが

職員:はぁ・・・

来栖:もっとこう、イチィサシッて数えてくんないと

来栖:イチィサシゴッキュジュッて

職員:あの、お客様

来栖:来栖だけど

職員:・・・来栖様

来栖:なに

職員:順番でお呼びしますので、ご協力いただけますでしょうか・・・?

来栖:いやそれがおかしいでしょって

職員:えっと・・・それ?

来栖:いやだからさ

来栖:順番だったら71より60の俺の方が先っしょ

職員:あ、いえ

来栖:どっちの方が番号若いの

職員:え?

来栖:71と60、どっちの方が若いのって

職員:えっと・・・60ですが・・・

来栖:しょ?

来栖:じゃあ俺のほうが先じゃんって

職員:あ、あのお客・・・来栖様

来栖:ん

職員:少々お待ちくださいね?

来栖:時間ないんだけど

職員:え、ええ、あの、少しだけ、お待ちください

来栖:急いでるんだけど

職員:失礼します

来栖:(深いため息)

0:間

職員:お待たせしました来栖様

来栖:ん

職員:それでは、先にご対応させていただきますので、ご用件をお伺いしますね

来栖:振り込みだって

職員:はい、お振込みで・・・えーっと、キャッシュカードはございますでしょうか?

来栖:え

職員:はい?

来栖:キャッシュカードいるの

職員:え、ええ・・・振り込みにはキャッシュカードと、印鑑と念のため身分証をいただいておりますが・・・

来栖:直(ちょく)で入れらんないの

職員:直(ちょく)・・・?

来栖:そうそうそう、お金、相手の口座に、直で

職員:・・・すみません意味が

来栖:・・・いるの、キャッシュカード

職員:お持ちでないですか?

来栖:持ってるよ

職員:えっ?

来栖:持ってるよ

職員:持ってるんですか

来栖:うん、持ってるよ

職員:じゃあ、はい、ご提出ください

来栖:はい・・・(キャッシュカードを出して)はい

職員:ありがとうございます

職員:お通帳と印鑑はございますか?

来栖:あるよ

職員:免許証は?

来栖:お姉さん、俺が運転できそうに見えんの

職員:えっと・・・

来栖:できるよ

職員:え?

来栖:できるよ、運転、トラクターとか、ドリフトしちゃったりなんかして

来栖:んははは

職員:あははは

来栖:急いでるんだけど

職員:申し訳ございません・・・

来栖:はい、免許証

職員:ありがとうございます・・・

来栖:ん

0:間

職員:はい、では、お振込みなんですけど

職員:こちらの書類にお振込み先の口座をご入力いただいて・・・おいくらお振込みされますか?

来栖:1千万

職員:はいはい、1千万・・・

職員:1千万!?

来栖:うん、1千万

職員:か、かしこまりました

来栖:すごいっしょ

職員:え、ええ

来栖:当選したの

職員:当選・・・?

来栖:うん、当選、メールでね

職員:はぁ・・・

0:職員、少し考えて

職員:あの、失礼ですがお客様、当選というのは・・・

来栖:ん

職員:当選ってどういった当選ですか?

来栖:購入権

職員:こうにゅうけん・・・?

来栖:そ、メールでね

来栖:あなたは1万人の中から選ばれましたって

職員:それで、1千万円?

来栖:そうそう、15時までに振り込まないと無効になるんだって

職員:はぁ・・・

来栖:だから急いでよ、もう30分もないから

0:間

職員:あの、失礼ですが・・・それ、詐欺じゃないですか?

来栖:え?

職員:いやですから、そういうメールって、詐欺なんじゃないかなって

来栖:いやいやいや

来栖:詐欺じゃないよ

職員:そうですか?

来栖:そうだよ、写真もついてたし

職員:写真?

来栖:うん、ちゃんと商品の写真もついてたから、詐欺じゃないよ

職員:ちなみに、何をご購入されたんですか?

来栖:なんでそんなの言わなきゃいけないの

職員:申し訳ありません、高額の入金をされるお客様には確認していますので

来栖:そうなの

職員:メールや電話による詐欺被害を抑えるためなので、ご協力いただければと思います・・・

来栖:そっか

職員:ええ・・・

来栖:うん

職員:はい

0:間

職員:何をご購入されるんですか?

来栖:(ごにょごにょと)・・・アン

職員:はい?

来栖:(ごにょごにょと)ニアン

職員:あの、すみませんもう一度

来栖:ポメラニアン

職員:え?

来栖:お姉さん耳悪いね

職員:いやいやいや、え?ポメラニアン?

来栖:なんだ聞こえてたの

職員:え?ポメラニアンですか?

来栖:急いで、1千万

職員:いやいやいやあの、お客様

来栖:来栖だって

職員:え?ポメラニアンってあの?犬の?

来栖:犬以外にポメラニアンってあるの

職員:いや、ないですけど

来栖:はやく

職員:・・・え?詐欺ですって

来栖:え

職員:いや、詐欺っていうか、なんですかそれ、もはや詐欺としても成り立ってませんって

来栖:どういうこと

職員:いやだって、ポメラニアン一匹1千万って、どれだけ天然記念ポメラニアンでもそんな値段しませんって

来栖:1匹じゃないよ

職員:え?

来栖:1匹じゃないって

職員:・・・なんひき?

来栖:1千万匹

職員:いっせんまんびき!!!!!!!!!!!!!!

来栖:ちょ、お姉さん、声デカいよ

職員:あ、すみません

職員:(後ろのブースに向かって)あー!失礼しましたーなんでもありませーん!大丈夫でーす!

0:間

来栖:大丈夫?

職員:来栖さん

来栖:なに

職員:詐欺ですって

来栖:詐欺じゃないって、写真もあるし

職員:いや、1千万匹のポメラニアンって、そんな取引聞いたことありませんって・・・ん?写真?

来栖:そうそう、メールに添付されてたの、えーっと

職員:どれですか

来栖:これ

0:間

職員:いやこれ・・・

来栖:なに?

職員:合成ですって!詐欺ですって!

来栖:ええ?合成なのこれ

職員:合成ですって!だってほら、みんな同じ顔してるし、向きとかも一緒じゃないですか

来栖:え、ポメラニアンの習性なんじゃないの、集団でいるとシンクロする的な

職員:ないですよそんな習性

来栖:えええ・・・

職員:来栖さん、悪い事は言いませんから、振り込まない方がいいですよ、騙されてますから

来栖:でもなぁ

職員:それに、たとえこれが詐欺じゃなかったとして、どうするんですか、ポメラニアン1千万匹も

来栖:いや、それは、かわいいじゃん、たくさんいたら

職員:いやかわいいですけど

来栖:しょ?

職員:でも、そんなたくさんのポメラニアン、どこで飼うんですか

来栖:え・・・?

来栖:家?

職員:家そんな大きいんですか

来栖:ううん、ワンルーム

職員:入りませんよ・・・

来栖:そう?

職員:入りませんって、ポメラニアン一匹でも(手で形を作って)このくらいはありますよ?

来栖:そう・・・じゃあ、まぁ、外で飼うよ、マンションの前の公園で

職員:逃げますよ

来栖:あ、そうか

職員:それに餌とかも、お金かかりますよ?そんなお金あるんですか?

来栖:いや、そんなないよ

職員:でしょう?だから、悪い事は言いませんから・・・ん?来栖さん?

来栖:ん?

職員:え?お金・・・

職員:少々お待ちくださいね?

0:間。職員は来栖の通帳を確認する。

職員:差引残高・・・5万円・・・

職員:足りないじゃないですか

来栖:え?なにが?

職員:いや、お金、ポメラニアン1千万円なんでしょ?

来栖:うん

職員:で、来栖さんの口座残高が5万円

来栖:うん

職員:足りないじゃないですか

来栖:え?

職員:ええ?

来栖:足りなくないよ

職員:・・・どうしてですか?

来栖:だから、直で、銀行から

職員:・・・は?

来栖:銀行から、1千万直で振り込もうと思ったの

職員:えっと・・・銀行のお金をってことですか?

来栖:そうそうそう

職員:・・・え、無理ですよ?

来栖:そうなの?

職員:ええ・・・

来栖:そっか

職員:あの、来栖さん、もうよろしいでしょうか

来栖:うん

職員:はい、じゃあ、こちら

職員:通帳とカード、印鑑と免許証、お返ししますね

来栖:あ、そうだ、もう一つ当選してるんだけど、そっちは振り込める?

職員:えっと・・・直で?

来栖:ううん、それは俺の口座からでいいよ

職員:あ、はい、できますよ

来栖:よかった、じゃあそっちよろしく

職員:えっと、お取引、おいくらになりますか?

来栖:3万円

職員:はいはい、3万円ね

職員:ちなみに今度は何にご当選されたんでしょうか?

来栖:ツル

職員:へ?

来栖:ツル

職員:ツル?

来栖:そうそう、ツル

来栖:ツルの肉、食べていいですよって、3万円で

職員:えっと、鶴の肉って、それこそ天然記念物で、下手したらそれ、犯罪になるんじゃあ・・・

来栖:いやでも、当選したから

職員:うーん・・・

来栖:写真もあるよ、見る?

職員:ええ、じゃあ一応

来栖:今度はね、一羽なんだけど、ほら

来栖:すらっとした長い首に凛々しい佇まい、たくましい翼と鋭く伸びたクチバシ・・・

職員:来栖さん、これ・・・

来栖:ん・・・

0:間

職員:詐欺ですって!

© 2024 らて@放浪作家

らての台本置き場

はじまめして!らて@放浪作家です! このサイトはシナリオライターのらてが執筆したシナリオを置いておく場所になります。 声劇や劇団のインプロ、演劇部の上演に使っていただいても構いません! 皆様こぞってご上演ください! ※上演前に必ず利用規約をお読みください

0コメント

  • 1000 / 1000