作品名の後の数字は「男:女:性別不問」の比率になっております。

[4:1:1]となっていたら

・男性4人、女性1人、男女どちらがやってもいい役が1人

という感じです。

あくまで台本選びのガイドなので、これを必ず守らないといけないというものではないのでご了承ください

※上演の際は必ず「利用規約」をお読みください

父親と娘の結婚挨拶 [1:1:0]

0:父親が怖い顔で黙り込んでいる。

0:娘は婚約者と共に座布団に座って難しい顔をしている。

涼子:お願い!

父親:だめだ

涼子:お願いって!

父親:だめだ

涼子:どうして、お父さん言ってくれたよね?

涼子:「お前が選んだ人ならば、きっといい人なんだろうな」って・・・

涼子:なのにどうして!

父親:だめだ

父親:だめだといったらだめだ

涼子:・・・こんなにかっこいいのに?

父親:だめだ

涼子:一流企業に勤めてるのよ?

父親:だめだ

涼子:由緒正しい家柄の、長男よ?

父親:だめだ

涼子:彼ね、やさしいの、私が料理してると、手伝ってくれるの

父親:だめだ

涼子:・・・お父さんと気も会うはずよ?

父親:気が合う?

涼子:え、ええ!

涼子:彼ね、電車が好きなの!

父親:ほう?

涼子:一緒に歩いていてね、電車が走っているのが見えるとね、そっち見るの

涼子:彼が電車を見ている時のまなざしはとっても熱烈なのよ

涼子:もうね、電車に嫉妬するくらい

涼子:お父さんも、電車好きでしょ?

父親:ああ、好きだ

涼子:お父さんのジオラマすごいもんね

父親:ただの趣味だがな

涼子:そ、そうだ!彼にジオラマ見せてあげましょうよ!

涼子:彼電車好きだから、きっとジオラマにも感動するはずよ!ほら!

父親:だめだ

涼子:なんで・・・

涼子:ねえ、お父さんは、おかあさんとなんで結婚したの?

父親:何?

涼子:だから、お父さんとお母さんのなれそめ、聞いたことなかったよね

父親:ああ、話したことないな

涼子:なんで?どこで出会ったの?

父親:学校だ

涼子:高校?

父親:・・・大学だ

涼子:へえ、大学

涼子:それで、大学で出会って、どっちから告白したの?

父親:それは・・・お父さんからだ

涼子:ふうん、どうして?

父親:どうしてって・・・

涼子:どうして?なんでお父さんはお母さんに告白したの?

父親:・・・好きだったからだ

涼子:でしょ!?

涼子:私も、イル男(いるお)君が好き

涼子:だからこうやって付き合って、結婚するの

父親:だめだ

涼子:どうしてよ!

父親:・・・

涼子:彼のどこが気に入らないの?

涼子:学歴?家柄?職業?年齢?役職?

涼子:ちなみに彼ね、役職は部長

涼子:まだ26歳、すごいでしょ?

涼子:こんなに完璧な人いないの、私ほんとうに彼の事が好き

父親:涼子

涼子:お父さんになんと言われようと、私彼と結婚するから

父親:涼子

涼子:それに、お母さんだって良いって言ってくれたし

涼子:電話で彼の話した時「あらあ、そんないいひと、涼子にはもったいないわね」って、認めてくれたもん

父親:涼子

涼子:もういい、お父さんに合わせた私が悪かった

涼子:私ももういい大人、両親の了承がなくても結婚できますから

父親:涼子

涼子:それじゃ、今日はもう帰ります

父親:涼子

涼子:ほら、いこうイル男君

父親:涼子!

0:間

涼子:・・・なに

父親:まあ、落ち着きなさい

涼子:落ち着きなさい?

涼子:私がこんなに話してるのに「だめだ」しか言わないお父さんの前でどうやって落ち着けっていうの!?

父親:涼子

涼子:・・・

父親:ほら、そこに座りなさい

涼子:・・・(座る)

父親:あのな、いいか涼子

涼子:・・・ん

父親:イル男君、だったな

涼子:うん

父親:君は、確かに、その・・・かっこいい、うん、かっこいいな

涼子:うん、でしょ?

父親:それに、いい企業に勤めているらしいな

涼子:そう、すごいのよ、大企業の部長さん

父親:ああ、うん

父親:そして、「優しい」ようだ

涼子:ええ、とっても優しいの、いっつも私の事気遣ってくれる

父親:そうだな、そうなんだよな

涼子:あと、電車もすき

父親:それは私と一緒だな

涼子:そう、お父さんと話も合うと思うよ!

父親:ああ、電車が走ってると、なんだったっけか

涼子:見るの、目で追うの、こーやって

父親:そ、そうか・・・

父親:ふむ・・・

涼子:どう?わかってくれた?

父親:うーん・・・

0:間

涼子:あのさ、お父さん

父親:うん?

涼子:私さ、もう34歳なんだよ

涼子:これまでいろんな人と付き合って、実家に連れてきたこともあったけど

涼子:結局うまくいかなくて、ずるずる独身引きずって、ようやく出会えた運命の相手なの

涼子:たぶん、これが最後のチャンスだとおもう

涼子:(イル男をさすりながら)だって、こんな素敵な相手いないもん

0:イル男、照れくさそうに笑う(ように見える)

父親:あ、ああ、そうだな、それはわかっているよ

涼子:でしょ?

涼子:だから、改めてお願いするね

涼子:イル男君との結婚を許してください!

0:間。イル男が少し動く。

父親:だめだ

涼子:どうして!!

父親:だからその涼子

涼子:うん・・・

父親:イル男君が、涼子にとっての理想の相手なのは分かった

父親:才色兼備、文武両道、優しくて思いやりがある

涼子:うん、そうよ

父親:・・・二人で同棲してるのか

涼子:ええ、今は同棲してるわ、元住吉で

父親:ああ、元住吉で

涼子:うん・・・

父親:君らが一緒に過ごしてきた中で、きっといろいろあっただろうな

父親:喧嘩と同じ数、仲直りしただろうし、助け合って、二人は結婚という選択に思い至ったわけだ

涼子:話し合ったわ

父親:ああ・・・

0:間

父親:でもな、涼子

涼子:何?

父親:イル男君は、ワニだろう?

0:間

涼子:え?

父親:いや「え?」ではなくて、イル男君はワニだろう?

涼子:そうよ?

父親:いやいやいや、え?

父親:その「そうよ?」っていうのは「そうよ?あたりまえじゃない、ワニ以外何に見えるの?」の「そうよ?」か?

涼子:お父さん何言ってるの、イル男君がワニ以外に見えるの?

父親:い、いや・・・ワニに見える

涼子:そりゃね、ワニだからね

父親:・・・あのな涼子

涼子:あ、もうこんな時間、お父さんウチに今鶏肉ある?

父親:ん?鶏肉?どうして

涼子:イル男君のごはん、出来れば胸肉がいいんだけど

父親:ええと、なにがいいのかな、簡単なものであればお父さん作るけど

涼子:いや、生でいいわ

涼子:生が一番喜ぶの

父親:ワニじゃないか・・・

涼子:だからワニって言ってるじゃない、ほらーイル男君ーごはんにしましょーねー

父親:まて涼子、イル男君の苗字、もしかして

涼子:え?苗字?言ってなかったっけ?

父親:あ、ああ、聞いてなかったな

涼子:黒子田(クロコダ)よ

父親:クロコダ・・・

父親:クロコダ・・・イル男・・・

父親:クロコダイル・・・

父親:ワニじゃないか

涼子:だからワニって言ってるじゃない

父親:え?涼子?

涼子:なによ、結婚許してくれないなら私帰るから

父親:いやちょ、まってって

涼子:なによ

父親:ワニと結婚するの・・・?

涼子:そうよ

涼子:私ね、もう人間とは結婚できない気がしたの

涼子:今まで付き合ってきた人、みんなダメ男だったし

涼子:というか、私と付き合うとみんなダメ男になっちゃうの

涼子:お世話し過ぎるっていうか、愛を注ぎ過ぎちゃうの

父親:ちょ、涼子?

涼子:でもね、ワニならその心配もないでしょ?

涼子:いくら愛と鶏肉を注いでも、ダメになることはないでしょ?

涼子:ていうかそもそもダメになったかどうかもわからないじゃない?

父親:ちょ、あの、涼子?

涼子:だってそもそも言葉がわからないわけだから、この人ダメになっちゃったなって判断する材料もないわけで

父親:涼子!

涼子:そういう点で行くと、気楽かなって

父親:涼子って!

涼子:なによ!人が喋ってる時に!

父親:ワニが・・・

涼子:あー、イル男君、まーたそうやって噛みついてー

涼子:お腹すいちゃったのかなー?

父親:ちょ、涼子、まずいって、右腕ワニに包まれてるって

涼子:ん?大丈夫だよ、いつもの事だし、あまがみあまがみ

父親:そ、そうなのか・・・

涼子:とにかく、私もう人間は良いかなって思ったって話

涼子:前の彼氏と別れて、落ち込んでる時、イル男君に出会ったの

父親:涼子?

涼子:バーで泣いてる私に、そっとお酒奢ってくれて

涼子:わたし、我慢できなくなっちゃって、仕事のうっ憤とか、元カレの愚痴とかぜーんぶ聞いてもらってさ

父親:涼子!

涼子:だから!私が今イル男君とのなれそめを(喋ってるのに)!

父親:ワニが・・・ワニが高速回転してるって!

涼子:えっ

父親:ちょ!涼子!とにかくワニ取らないと!

涼子:こら!イル男君!そんな急がなくてもちゃんとエサあげるから!

父親:お前もエサって言ってるじゃないか!ちょ、ほんと、まずいって!

涼子:お父さん!大きい声出さないでよ!大声出すとワニが興奮するから!

父親:ほらもうワニって言ったね!お父さんワニとは結婚させないからね!

涼子:ちょ、イル男!痛い!痛いって!

父親:涼子まってろ!今取るからな!

涼子:痛い痛い痛い痛い!

父親:うおぉりゃ!

0:がばっ

0:ワニが涼子の右手からはずれる。

父親:はぁ・・・はぁ・・・

涼子:いたた・・・

0:しばらく、息を整える二人。

涼子:イル男君・・・あなたがそんなことする人なんて思ってなかった

涼子:私ね、暴力振るう人だめなの

涼子:私はいいよ?どれだけ傷ついても、その傷さえも「ああ、愛なんだな」って思えるから

涼子:でも、私たちに子供が出来たら?

涼子:子供にも同じことする?ううん、きっとする

涼子:そしたらわたし「ごめんなさい」って思っちゃう

涼子:だからねイル男君

父親:涼子

涼子:ん?

父親:ワニ、逃げていったよ、窓から

涼子:・・・そっか

涼子:お別れも・・・言えなかったね・・・

父親:涼子

0:間。涼子は少し泣いている。

0:父親は釈然としない表情で佇んでいる。

涼子:ま、もう私も失恋には慣れちゃったわ

涼子:でもね、私、こっそり気になってた人がいるの

涼子:近くのカフェで働いてる店員さんでね?

涼子:ファロ男(ファロオ)さんっていうの

父親:・・・苗字は?

涼子:バッ!

父親:「バッ」?

涼子:そう、バッ!

涼子:罵倒の罵と書いてバッ!

涼子:バッファロ男さん

父親:バッファローだな

涼子:とってもたくましくてね、重量は1トンくらいあるの

父親:バッファローだな

涼子:相手を攻撃する時は自慢のツノで突進するの

父親:バッファローだな

涼子:異名は「黒い死神」

父親:バッファローだな

涼子:でも普段はとってもおっとりしてておとなしいバッファローなの

父親:ほら、もうバッファローって言っちゃってるもん

涼子:偶蹄目(ぐうていもく)ウシ科、バイソン属

父親:バッファローだな

涼子:群れはオス同士、もしくはメスと子供

父親:バッファローだな

涼子:最高速度時速60キロメートル

父親:バッファローだな

涼子:(あなたが知りうるバッファローに関する知識)

父親:バッファローだな

涼子:(あなたが知りうるバッファローに関する知識)

父親:バッファローだな

涼子:(あなたが知りうるバッファローに関する知識)

父親:バッファローだな

0:(上記のくだりは何回繰り返してもいいです。飽きるかネタが尽きるかしたら枠を閉じてください)

0:バッファロー情報が羅列される中、画面はだんだんとフェードアウトしていく

0:幕

© 2024 らて@放浪作家

らての台本置き場

はじまめして!らて@放浪作家です! このサイトはシナリオライターのらてが執筆したシナリオを置いておく場所になります。 声劇や劇団のインプロ、演劇部の上演に使っていただいても構いません! 皆様こぞってご上演ください! ※上演前に必ず利用規約をお読みください

0コメント

  • 1000 / 1000